川崎パスサッカーの主役、家長昭博。その「スゴさ」は両刃の剣だ (3ページ目)

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 佐野美樹●写真 photo by Sano Miki

 この湘南戦でもその傾向は目立った。しかも、その位置はけっして高くなかった。中盤の選手か、サイドアタッカーか。どちらに見えたかといえば前者だ。家長は大島僚太、田中碧の守備的MFとほぼ同じレベルでプレーした。

 遠藤保仁、中村憲剛、中村俊輔など、もともとゲームメーカーだった選手より、家長は逞しく見える。ボールを奪われることはまずない。サイドアタッカーであるにもかかわらず、細かなパスもうまい。

 家長より年長の中村憲剛が欠場したことも手伝い、湘南戦の家長は大将然として見えた。かつてのコロンビア代表カルロス・バルデラマ、アルゼンチン代表フアン・ロマン・リケルメを想起させる、このご時世、なかなかお目にかかれない古典的なキャラを発揮した。

 サイドハーフであるにもかかわらず、中央にも進出する。これは3シーズン前、川崎に移籍してきた時から変わらぬスタイルだが、過去2シーズンはその後ろに、J1リーグのベストイレブンにも輝いたエウシーニョが控えていた。家長のサポートを受けなくても、個人で局面を打開できる高い推進力を備えた右サイドバックがいた。エウシーニョには家長の奔放な動きを補う力もあった。

 しかし、エウシーニョは清水エスパルスに移籍。今季、右SBは馬渡和彰と鈴木雄斗が交代で務めているが、エウシーニョのレベルには及んでいない。

 その結果、今季の川崎は、前方向へのベクトルが働きにくいサッカーになっている。右サイドバックの戦力ダウンを補う意味でも、右サイドハーフと右サイドバックの緊密な関係が求められるが、現実はそれがうまくいっていない。右SBの弱点が露わになりやすいサッカーに陥っている。

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