優っているようで劣っている。グランパス風間監督の理想は超難関だ

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 サッカーの見方は人それぞれで、評価のポイントも千差万別だろう。試合後に同業者と話をしていても、「そうだったよね」と相槌を打ちながらも、内心は「そうだったか?」と突っ込みを入れたくなることは多々ある。

7試合を終えて4勝2敗1分と好調をキープしている名古屋グランパス7試合を終えて4勝2敗1分と好調をキープしている名古屋グランパス もちろん、自分の意見がすべて正しいとは思わないし、相手の意見もまたしかり。それぞれがそれぞれの見方や意見を備えているからこそ、サッカー談義に花が咲く。そして、その議論は多くの場合は、相容れることなく、もやもや感だけを腹の奥底へと残していく。

 さまざまな見方があるからこそ、サッカーは面白い。つまり正解はないのだ。何がよくて、何がよくなかったか。その判断基準は、自分なりの物差しに任せればいい。

 と、前置きが長くなったが、いよいよ今回ばかりは自分の目を疑ったほうがいいんじゃないかと思ってしまった。

「とくに前半は、相手を受け入れてしまった。全員ではないですが、何人かの選手が相手を受け入れてしまった。いつの間にか、頭が相手のパズルになっていた」

 試合後の風間八宏監督のコメントを聞いた時、自分は果たしてこの試合を本当に見ていたのかと、錯覚に陥ったほどだった。

 4月13日、日産スタジアムで行なわれた横浜F・マリノスと名古屋グランパスの一戦。前半の主導権を握っていたのは、名古屋のほうだった。筆者には、そう見えた。

 攻撃スタイルを標榜する両者は、昨季はともに残留争いに巻き込まれたものの、今季は開幕から好調を維持し、順位表の上位に顔を出している。質の高いパフォーマンスを続ける両チームの一戦は、間違いなく今節の最大の注目カードだっただろう。

 試合はその期待感に見合った内容だった。互いにリスクを恐れず敵陣にパスを通し、質の高い個人技とコンビネーションを駆使して相手ゴールに迫っていく。開始早々にジョーのPKで名古屋が先制すると、20分に横浜FMが鋭いカウンターからマルコス・ジュニオールが決めて同点に追いつく。後半も両チームに多くの決定機が生まれるエキサイティングな攻防が繰り広げられたが、結局互いに決め手を欠き、勝ち点1を分け合う結果となった。

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