スペインの師匠が弟子のリージョを語る。「彼には特別な能力がある」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Fujita Masato

「今の私には、神戸の展望を語ることはできない。しかし神戸の選手たちが、たとえファンマの求める高いレベルに達していないとしても、戦術的なアプローチは必ずできる。短時間で、技術を格段に上げることはできない。しかし、戦術はロジックだから、やり方次第。論理的な動き方なので、ファンマがそれを伝えることは十分にできるはずだ」

 ロジカルな動きを身につけられるようになったら、自然と選手のプレーも改善されるという。

「指導者は、すばらしいプレーを選手に求めるべきではない」

 エチャリは哲学的に語っている。

「選手も度肝を抜くようなプレーをする必要はない。大事なのは、簡単なことを高い精度でやれるかどうか。戦術が向上すれば、それが可能になる。たとえばラインを突破するのに、派手なフェイントを繰り返して一か八かで抜くよりも、壁パスのワンツーが的確に決まれば、それでいい。その点で傑出しているのが(アンドレス・)イニエスタだ。

 選手はプレーの中で成長できる。たとえばコスタリカ戦の遠藤航は、とてもいいプレーをしていた。正直、過去に見た試合ではその特長が伝わってこなかった。しかし、シンプルにプレーする、ということが自分の中で整理できたのかもしれない」

 神戸の選手も、リージョの哲学を体現できるか。

「ファンマのフィロソフィや理念はたしかに優れている。しかしそれよりも、彼には自分にはない特別な能力がある」

 エチャリの話しぶりに、熱が帯びた。

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