インターハイの新ルールで明暗。酷暑が生んだ高校サッカーの番狂わせ (3ページ目)
ボールを支配し、暑さの中で相手を走らせて追い込んでいくと、メンタル的にも追い詰められてミスも出てくる。近年、高校総体で番狂わせのような優勝が出ていないのは、酷暑の中でボールを支配できるチームが優位性を確保できることが大きかったのだが、今大会の様相は違った。
「こっちが押し込んで『いけるな!』となったときにブレイクにされてしまう」と平岡総監督は苦笑いを浮かべた一方で、「クーリングブレイクに救われた」と振り返る監督も多かったのが印象的だ。
体力面のリカバーや戦術的な修正ができるのはもちろんだが、何よりパニックに陥っていたメンタル面をリセットできることが大きい。選手個々の経験値に欠けるチームはなおさらだ。劣勢のチームからは「ブレイクまで頑張れ!」という分かりやすい指示が飛ぶこともしばしばで、試合中の心理的な意味でも押し込まれがちなチームに有利なルールだった面はある。
走って戦うスタイルを徹底して貫いた"ストロングスタイル"の山梨学院が優勝したのは、こうした大会の傾向と無縁ではなかったように思う。ターニングポイントとなった市立船橋との2回戦も、ボール支配率では圧倒的に上回られながら最後まで粘り、前半に挙げた1点を守り切って勝利を収めている。
これが例年のような飲水タイムのみのレギュレーションだったら、果たしてどうだったか。規定に合わせて戦えるチームがいいチームなのは間違いないが、今大会に関してはルールの妙があったのも事実だろう。
「冬の選手権も、有名校にとって厳しい大会になるのでは?」という声もあるが、以上のような理由で総体がこうした結果になったからといって、選手権も同じような展開になるとは言いがたい。
冬の大会は涼しい中で走り切れるため、夏の大会よりもガッツ系のチームが勝ちやすい傾向がある。なので、今年度の高校サッカー選手権もいつもと変わらず予測不能な波乱の大会になるだろうし、夏に早期敗退した有名校の巻き返しも大いにありそうだ。
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