「特殊サッカー」に変身したマリノス。2冠セレッソはどう対応したか (2ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • photo by AFLO

 17分に生まれた先制ゴールは、まさにその特徴が生かされた形だった。右サイドからのグラウンダークロスを中央で待ち受けた左サイドバックのDF山中亮輔が豪快なミドルシュートを叩き込んだのだ。

 MF天野純いわく「いい意味でマリノスらしくないサッカー」は、勇敢であり、ゴールを奪うというこのスポーツの本質を追求した、実に魅力的なものだった。

 そんな横浜FMの果敢なスタイルに、C大阪の選手たちは面食らっているように見えた。中盤では激しいプレッシャーにさらされ、ぽっかりと空いた相手の裏のスペースを狙ってもパス精度が伴わず、あるいは受け手がオフサイドに引っかかり、攻撃のリズムを掴めない。6分に生まれたFW柿谷曜一朗の"正真正銘のゴール"がオフサイドで認められないという不運があったにせよ、C大阪にとっては苦しい前半の45分間だった。

「我々の選手たちが戸惑う部分は確かにありました」と、尹晶煥(ユン・ジョンファン)監督は振り返る。極端なハイラインとハイプレス、特殊なポジショニングによるサッカーは、スカウティングである程度の情報を得ていたとはいえ、実際に体感してみないと対応するのは難しい。

「初めてああいうやり方のチームとやったので、やりにくさはありました」

 MF山口蛍も本音を吐露する。2ヵ月前とはまるで違うチーム、しかもこれまでに味わったことのない戦い方をするチームに、いかに対処していくのか――。それが、残された45分間でのC大阪の最大のテーマとなった。

 前半の45分を水沼はこう振り返る。

「相手のサッカーはたしかに特殊ではありましたけど、それに対応できなかったというよりも、出足だったり、予測という部分が僕らには欠けていた。自分たちのひたむきさが足りなかったのと、ひとりひとりのスペースをコンパクトにできなかった。そこをもう少し考えないといけない」

 昨季のC大阪の躍進は、尹晶煥監督が持ち込んだハードワークや献身性、あるいは闘うメンタリティが基盤をなす。ところが、前半のC大阪は横浜FMのスタイルに戸惑いながらも、球際の戦いでも相手に譲っていた。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る