今季Jのイチオシ。セレッソの水沼宏太は「チームに勝利を呼び込む男」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Jun Tsukida/AFLO SPORT

 水沼のプレーには一切の暗さがない。前向きな姿勢が、運をつかみ取らせるのだ。

「宏太はメンバーを外されたりしても、少しも腐らない。真面目に全力で練習に取り組み続けられる。いつも明るく振る舞うし、手を抜かない。前向きでポジティブなパワーが、チーム全体にいい影響を与えるんです」

 水沼について、サガン鳥栖時代のチームメイトである豊田陽平がそんなふうに語っていたことがあった。

『明朗さ』

 それは才能のひとつなのだろう。バカ騒ぎをする、ふざける、機嫌のいいときには周りを盛り上げる、という選手はいくらでもいる。

 しかし、水沼はチームが苦境に立たされたとき、例えば失点してリードを許した場面で、喝を入れるような声が出せるし、率先して自ら勇敢なプレーを見せ、チームを活性化できる。面白いことを言って笑わせるような明るさではない。場を好転させる朗(ほが)らかさというのか。

 その点、水沼自身が感情量の多い選手だ。与えられた舞台によって、大きくなれる。期待されるほどに、それに応えられるプレーヤーと言えるだろう。

「おまえ、そんなもんじゃないだろ?」

 2016年シーズンにFC東京で不遇をかこっていたとき、セレッソの監督に就任した尹晶煥(ユン・ジョンファン)から誘われた言葉に、刺激を受けたという。反骨心も強い。それをプレーに転換できる。

 Jリーグにおいて、今や右サイドでの存在感は群を抜いている。ひとりでごりごりと切り込んでいくドリブラーではない。しかし周りを使いながら、中に入ってプレーする技術が高く、コンビネーションによって守備ラインを突破できる。

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