今度こそ絶対、悲願のタイトルを。中村憲剛がフロンターレを頂点に導く (4ページ目)

  • 原山裕平●取材・文 text by Harayama Yuhei
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 浦和戦では後手に回った鬼木達監督の采配も、この日は前向きだった。スピードに長けたMF長谷川竜也とFWハイネルを投入してカウンターの態勢を整えると、90分にその長谷川が3点目を奪取。浦和戦を教訓に、耐えしのぎ、そして攻め手も保ち続けた川崎Fが見事な逆転勝利でファイナルへと駒を進めた。

 それにしても、中村憲剛という男の存在の大きさが改めて浮かび上がった試合だった。高い技術で創造性をもたらし、優れた頭脳でチームを落ち着かせることができる。この名手の存在こそが、今でも川崎Fの何よりの強みであるはずだ。

 間もなく37歳を迎える中村は、これまでタイトルとは無縁のキャリアを送る。リーグ戦では2位が最高で、ルヴァンカップは2度(チームとしては3回)決勝に進みながら、いずれも敗戦。今年の元日の天皇杯決勝でもあと一歩に迫りながら、鹿島アントラーズに敗れている。シルバーコレクターのレッテルを張られる川崎Fのまさに象徴として、これまでに多くの涙を呑んできた。それでも、中村は前向きに話す。

「正直、今年のチームは今までとは違うなと感じている。自分たちがやるべきことをやれば、タイトルは近づいてくるという実感を、試合を重ねながら得られている。決勝(11月4日・埼玉スタジアム)は少し先だけど、いい準備をして臨めればね。隙のない渋いチームになってきていると思うので」

 無冠の男は、今度こそ栄冠を掴むことができるだろうか。

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