迫る降格圏。それでも「残留の達人」ヴァンフォーレ甲府は自信あり (3ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki photo by Ken Ishii -JL/Getty Images

 後半も、甲府は各選手がギャップを見つけて走り、そこでボールを受け、外に弾き、再び中にギャップを見つけ、清水にペースを与えない。例えばセンターバックが持ち上がると、インサイドハーフはサイドに流れ、ツートップのどちらかが中盤に落ち、楔(くさび)を受けてフリックでサイドから裏に走る選手に通す。それはチームとしての約束事であって、共通理解ができていた。

「トレーニングを続けてきた成果が出ていると思う。今日も数多くのチャンスを作れていた。クロスも多く入れられたし、セットプレーの数も圧倒しているはず(CKは甲府が8、清水が1)」

 吉田監督はロジックでコンビネーションを作り上げ、その手応えを感じていた。

 ところが、サッカーの神様はいたずらをする。

 70分、ロングボールを清水のミッチェル・デュークが甲府のディフェンダーと競り合う。このこぼれを拾う格好になったデュークは、反射的にかかとで蹴る。一か八かに近いパスだったが、エリア内に入ってきた北川航也は本能的に胸で前にトラップし、右足を振り抜いた。ボールはGKの手を弾き飛ばすように、ネットに突き刺さった。

「(デュークと)競り合った後、甲府の選手は一瞬、"ファウルか"と躊躇した。そこで、空白を作ってしまった。だから事故的な失点にも見えるが、事故ではない。あれ以外、ほとんど決定機は作らせなかったのだが......」

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