そんな「キャラじゃない」豊田陽平が鳥栖のキャプテンになった経緯 (4ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

「幼い頃、母親に『自分のことだけじゃなくて、人のことを考えて生きなさい』と諭(さと)されてきたことは関係しているかもしれません。人が思っている以上に、自分は人のことを考えてしまうところがあって。自分は例えば、(大久保)嘉人さんのように『俺によこせ』という欲を強く出せない。まずはチームが勝つための選択をする。そこで自分が点を取る必要があるなら、その仕事を果たすだけで」

 Jリーグではストライカーのキャプテンは極端に少ない。欧州にはレアル・マドリードのラウル・ゴンサレス、アーセナルのティエリ・アンリなど、FWの伝説的キャプテンがいたが、日本サッカー界はボランチが圧倒的多数だろう。豊田は固定観念を壊せるか。

 ひとつ言えるのは、彼は自己を確立する訓練を怠らないということだ。それは物言わぬ頼もしさを人に与える。実は生来的リーダーで、キャプテンにふさわしい人間なのかもしれない。腕章を巻くことで、その肖像はより明瞭になる。

「個人タイトルは自分に箔がつくだけ。点を取っても勝てないなら本末転倒です。チームがタイトルを取るため、僕は全てを優先しますよ。もちろん、チャンスが来たら決めるスタンスは変わりませんけどね」

 信条を語る豊田は、新しいキャプテン像をこしらえるかもしれない。

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