浦和レッズの敗戦を「他山の石」に。
J2残留に成功のツエーゲン金沢 (4ページ目)
そして71分、布陣変更で左サイドバックに下がっていた宮崎が、カウンターを発動させた相手をファウルでストップ。退場を命じられてしまう。これで万事休すだった。
「相手が10人になってからは、試合をコントロールできました」
森下監督は安堵の面持ちで語り、金沢はどうにかJ2残留を果たしている。試合後のピッチで、監督は歓喜に沸く金沢の選手たちに胴上げされそうになった。「21位なのにいいよ。もう少し痩せてから......」と、煙に巻いて断ったが、こみ上げてくるものがあるのだろう。その目には涙が滲んでいた。J2に昇格させた監督であり、5年間の指揮の集大成だった。
一方、昨季降格した栃木は「1年でJ2昇格」を目標に掲げてきたが、再びJ3で1年間、辛酸を舐めることになった。選手たちはうなだれ、ゴール裏に陣取るサポーター席に向かうが、言葉が出ない。クラブを去らざるを得ない者もいるだろう。そこには落胆と失意しかなかった。
そのコントラストはむごたらしい。しかし敗者の光景をロングショットにして、「地域のために精一杯やった」などという言い訳で溶かすのは、むしろプロ選手への冒涜だろう。あるいは勝者と敗者の隔たりにこそ、Jリーガーの矜持はあるのかもしれない。もし、どのカテゴリーにいても平等に扱われるなら、誰もプロの世界に夢を抱きはしないだろう。
天国と地獄。明と暗の二つの世界があるから、語り継がれるドラマも生まれるのだ。
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