柿谷、原口...。戦力流出にJクラブはどう対処すべきか (2ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • 山添敏央●撮影 photo by Yamazoe Toshio

 となると、問題はその穴をいかに埋めるか。ただ選手を引き抜かれただけで終わりにしないことが、重要なポイントとなる。

 もちろん最善策は、事前に選手の意向を把握したうえで、代わりとなる選手を獲得するなり、併用するなりして、その穴埋め策を講じておくこと。特に優勝を争うようなクラブは、そうした対策が必須だろう。主力選手が引き抜かれるという不測の事態が起きたので優勝できませんでした、ではあまりに情けない。

 とはいえ、代わりの選手を準備することだけが穴埋めのすべてではない。とりわけJリーグのような発展途上のリーグにとっては、なおさらだ。

 ここでは、田中を引き抜かれた柏のネルシーニョ監督の言葉が参考になる。

 ネルシーニョ監督は「選手というのは常に周りから見られており、目立った活躍をすると、特に若い選手には触手が伸びてくる」と現状を認識したうえでこう語る。

「うちのクラブは(選手との契約に)違約金を組み込んだり、(年俸を上げて)選手の評価を上げたりすることで流出を防ぐ準備をしているし、それは他のクラブもやるべきことだと思う。(選手を)取られてしまったあと、お金が残らないのでは厳しいので、経営者側としては違約金を設定しながら、入ってきたお金で別の投資をする。そういう準備は当然必要ではないだろうか」

 もちろん、その瞬間だけを見れば、主力を引き抜かれることは痛手以外の何物でもない。だが、長い目で見れば、それによって得た違約金を元手に「別の投資をする」のは非常に有益なことだ。

 例えば、育成部門に投資してもいいだろうし、練習施設、あるいはスタジアムなどのハード面に投資してもいいだろう。

 そう考えると、海外移籍で注視すべきは、誰がどこへ移籍したかよりも、その移籍によってクラブにお金が残ったかどうか、だ。

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