2014.02.28

川崎フロンターレに芽生えた、絶妙な「先輩・後輩の関係」

  • 飯尾篤史●取材・文 text by Iio Atsushi 松岡健三郎●撮影 photo by Matsuoka Kenzaburo

 風間八宏監督が就任して3年目、悲願の初タイトルを狙う川崎フロンターレの2014シーズン。ヴィッセル神戸との3月2日のリーグ開幕戦(等々力)に先駆け、川崎は2月26日にAFCアジアチャンピオンズリーグ(ACL)の初戦を戦った。

 等々力陸上競技場に中国の貴州人和を迎えた一戦は、1-0で川崎フロンターレがリードして終盤を迎えていた。

 シーズン最初の公式戦ということで疲れが出たのか、川崎の攻撃陣の足は止まり始めていた。だから、フレッシュな選手を送り出し、前線からの守備の圧力を強めてもよかった。

 あるいは、相手はロングボールを放り込んでパワープレーに出たため、高さのあるDFを投入する手もあった。ところが、川崎ベンチは動かなかった。4日後にはリーグ開幕戦を控えているにもかかわらず、交代枠をひとつも使わなかったのだ。

今季もキャプテンとしてチームを引っ張る中村憲剛 その理由が、いかにも風間監督らしかった。

「リズムですね。あれだけボールが動いていましたので、ここで選手を代えて守るより、ボールを持っているほうが問題はないという判断です」

 指揮官が言うように、ほとんどの時間帯でボールを保持していたのは、川崎だった。試合の入りはスムーズで、序盤から丁寧にパスをつないで敵陣でゲームを進めた。ややスローペースに感じなくもなかったが、それ以上に、シーズン最初の公式戦にしては落ち着いているという印象が強く、相手DFの間にポジションを取ってパスを受け、相手のマークから逃れるようにしてボールをキープした。

 31分にレナトが直接フリーキックを決めると、流れは一層ホームチームへと傾いた。与えた決定機は、後半のアディショナルタイムにGK西部洋平が直接FKを弾き出したワンシーンだけ。強烈なフィジカルコンタクトが売りの貴州人和がそれほどガツガツ来なかったのは、川崎が相手の逆を突いたり、巧みにいなしたりしたからだろう。

 前日、「フロンターレの独特なサッカーをアジアに知らしめるいい機会」と語っていた中村憲剛は、「その一端は見せられたんじゃないかと思います」と満足そうな表情を見せた。ただし、内容面すべてで満足していたわけではない。一方的に押し込んでいた20分までにゴールを奪えていれば、大差がついて、もっと楽に勝てていたゲームだった。