日本代表が進むべき道はポゼッションか?カウンターか? (3ページ目)
これは、オフトジャパンの少し前の日本代表と韓国代表の話になるが、当時、日本はずっと韓国に勝てず、韓国の背中を追いかけていた時代だった。私も含め、選手たちは「フィジカルの強さで韓国を上回れ。運動量でも上回れ」と、尻を叩かれていた。それでも、試合ではいつも先にこちらの足が止まってしまい、韓国を上回れなかった。
それが、オフト監督が就任してからは、連動してパスをつないでボールを保持するスタイルを身につけ、相手を走らせることで韓国の選手が日本より先に足をつってしまう展開にできた。つまり、俊敏性や組織力、蹴る技術で相手を上回ることで勝つことができた。
この経験もあって、フィジカル重視で勝負するやり方、つまり、攻守にハードワークをして、90分間何回もスプリントをし続けるサッカーは、日本人には合っていないというのが今の私の考えだ。たとえ欧州リーグでプレイする選手が増えた現在の日本代表であっても、強豪国を相手にドルトムントのように90分間ハードワークを続けるだけのフィジカルはまだないと私は思っている。
だからこそ、吉武監督が継続しているU-17日本代表のポゼッションサッカーは、日本らしいサッカーの可能性を示しているのではないかと思う。「体が大柄でも、屈強でもない日本人は、こうすれば世界大会で戦えるんだ」ということを示している。
ただし、吉武監督の志向するサッカーや、バルセロナのようなポゼッションサッカーを成立させるためには、選手たちが長く同じ時間を共有してトレーニングを積み、そのスタイルを叩きこまれていることが必要になる。その時間をつくれないと、ポゼッションサッカーを築きあげることは難しいだろう。
たとえば、世界王者のスペイン代表はここ数年ほぼ同じメンバーで戦っているが、主軸はバルセロナの選手であり、そこには子どものころから築いてきた連係とコンビネーションの成熟がある。
セルビアとベラルーシに連敗後、オランダ、ベルギーとの連戦に臨むザックジャパン それに対して、現在のザックジャパンは、選手が各国に散らばっているため、一緒にトレーニングをして連係を高める時間があまりない。つまり、U-17と同じことを、A代表で実践するには難しい状況にある。ここが、今後、考えなくてはいけない課題のひとつだろう。
ザックジャパンは、個の能力はある程度世界のトップに近づいてきている。だが、その分組織として攻守のコンビネーションの緻密さのレベルが落ちてしまっている印象がある。日本が世界で勝つために重要な、ストロングポイントとすべきなのは、ポゼッションサッカーのための組織力や、チームとしてのまとまり、一体感だと私は思っている。
16日にオランダ、19日にベルギーと対戦するザックジャパンが、組織として、チームとしてどのような戦いを見せてくれるのか。強豪との連戦に注目したい。
著者プロフィール
福田正博 (ふくだ・まさひろ)
1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。
3 / 3