アーセナルに惜敗。浦和レッズが世界レベルに近づくためには?

  • 菊地正典●文 text by Kikuchi Masanori
  • 山添敏央●写真 photo by Yamazoe Toshio

 結果は1−2。45年ぶりの来日を果たしたアーセナルに、浦和は敗れた。だが、世界的なビッグクラブと対峙したことで、自分たちの通用する部分と、足りない部分を感じることができた試合だったのではないだろうか。

 アーセン・ベンゲル監督が「テスト」と位置づけ、リザーブチームに所属する20歳のDFイグナシ・ミケルや、18歳のMFサージ・ナブリーをスタメンに起用した浦和戦。あくまで親善試合。さらに長い移動を伴った上の連戦であり、アーセナルがどこまで本気だったかはわからない。しかし、ベンゲル監督はレギュラークラスの多くを投入してきた。そんなトップレベルを肌で感じられる環境において、浦和のサッカーが通用したと感じさせる部分は、確かにあった。

アーセナルの実力を肌で体感し、世界との違いを語る坪井慶介アーセナルの実力を肌で体感し、世界との違いを語る坪井慶介 特に浦和らしさが出たのは、前半10分のプレイ。阿部勇樹がドリブルで持ち運んで左サイドにパスを送ると、梅崎司がさらにドリブルで運んで前線にくさびのパス。これを興梠慎三が収めると、追い越す動きを見せた山田直輝とのワンツーからマルシオ・リシャルデスへ。そして、マルシオ・リシャルデスが右サイドのオープンスペースに走り込む宇賀神友弥へパスを送ると、宇賀神はスピードを緩めずにワンタッチで低いクロスをニアサイドに入れ、山田直がGKとDFの間に走り込む----。

 結果としてゴールに結びつかなかったものの、美しいパスサッカーを標榜(ひょうぼう)するアーセナルに引けを取らない、浦和の持ち味が存分に出たプレイであり、同時に自分たちの良さを出せばトップレベルの相手でも崩せるということを示した瞬間だった。試合後、ミハイロ・ペトロヴィッチ監督は「自分たちのサッカーをチャレンジしたし、アーセナル相手に我々の良い部分を出せたと思う」と述べ、長いリハビリ生活を経て事実上の復帰戦となった山田直は「勝てない試合ではなかった」と表現した。

 しかし、結果どおりの差があったことも事実。まずは、「ひとりひとりのスピードだったり、体の強さ」(小島秀仁)や、「止める、蹴る、の質」(坪井慶介)という、基礎的なフィジカルや技術の問題だ。それは生まれ持った能力であったり、あるいは「ゴールデンエイジ」と言われる9歳〜12歳の育成の段階で決まってしまうものかもしれない。ただ、年齢にかかわらず、成長はできる。それは昨季、新たなサッカーに取り組んだ浦和の中で、坪井や鈴木啓太といったベテランがなおも成長したことで実証している。基礎技術の向上を図ることは、世界との差を縮めるために必ず必要なことだ。

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