【日本代表】ベンチワークから考えるザッケローニ監督のマネジメント能力 (2ページ目)

 サッカーで「ベンチには置いておけない選手」という表現がある。これはスタメンで出場できるならいいが、ベンチに置くと不平不満ばかりで、チームに悪影響を与える選手ということ。だから、ベンチに置く選手は、1993年のオフトジャパン、2002年のトルシエジャパンの中山雅史がそうだったように、若手か、経験のあるベテランが理想だろう。若手であれば、自分が未熟で経験不足なことをわかっているので控えになってもあまり不満を言わないし、経験豊富なベテランであれば、チームのために自分がどう行動すればいいかを熟知しているからだ。それが、ベンチメンバーも含めてチームを作るということであり、それが組織というものでもある。

 これは現在の代表チームでも同じだ。ザックジャパンも、招集されるのは先発でピッチに立つ11人だけではなく23人いる。とくに代表クラスの選手の場合、小さい時からずっと先発している選手ばかりで、ベンチに座ることに慣れていない選手がほとんど。だから、ベンチでどうしていいのか、その振る舞い方がわからないことも十分ありえる。

 ベンチにいて試合に出られないからと不貞腐(ふてくさ)れてしまい、しかも、ちょっとチームが負けて状態が悪くなると、それ見たことかと文句を言い出す。そんな選手がいることは、やはりチームのためにならない。もちろん、選手であれば、当然試合には出たいだろう。ただ、その気持ちが、ときにチームの足を引っ張ってしまい、雰囲気を悪くするリスクがあるということだ。

 今、ザックジャパンのベンチに控えるメンバーの顔ぶれを見ると、若手のほかに、経験のある駒野友一や中村憲剛がいる。クラブでは常に主力の彼らにとって、ベンチに座ることは悔しくもあるだろうし、ふたりにとって控えでいることがいかに難しいことか想像してみてほしい。それでも彼らは、チームのために振る舞うことができる選手であり、チームにとって貴重な戦力でもある。強いチームはやはりバックアップメンバーがいい。だから、サッカーというスポーツは、ピッチの11人のバランスだけではなく、ベンチのマネジメントも非常に重要だ。

 たとえば、オフト監督が代表監督の頃、彼は12番目、13番目として最高の選手をベンチに置かなければいけないと言っていた。つまり、ベンチに置く選手には、スタメンとはまた異なる役割があるから、それにふさわしい選手を選ばなくてはいけない、と。

 ベンチメンバーといえども、交代出場した時にはいいパフォーマンスを求められる。たとえば、今の代表では、細貝萌はどんな状況でも、どんな時間帯でもピッチで100%のプレイを見せる。そうしたメンタリティを、ザッケローニ監督は必ず見ていると思うし、評価もしていると思う。

 局面を打開できる、高さやスピードなど、特徴がはっきりした選手、あるいは、ゲームをクローズする守備の選手をベンチに置くことも、もちろん重要だ。そして、そうした能力があったうえで、ベンチに置いてもチームに不協和音をもたらさない選手かどうか。それが、12番目以降の選手に必要な資質であり、それを兼ね備えているかどうかを含め、監督は選手のことを常に見ているものだ。

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