【日本代表】スローインの重要性を示した前田遼一の得点
【福田正博 日本代表スカウティングレポート Vol.27】
2014 FIFAワールドカップ アジア最終予選 vsイラク
前半25分 前田遼一
○日本 1−0 ●イラク 2011.9.11.埼玉スタジアム
今回は、2012年9月イラク戦の前田遼一のゴールを解説します。
このゴールでポイントになるのはふたりです。ひとり目はアシストをした岡崎慎司。そして、ふたり目はゴールを決めた前田遼一です。このゴールは、駒野のスローインから始まって生まれましたが、実は、コーナーキック、フリーキックだけがセットプレイではなくて、スローインもリスタートなんです。
セットプレイというのはゴールになる可能性が非常に高い。そこのところを理解して、見逃さずにスキを突いたゴールということが言えます。これは、何度もチームで練習していたパターンだと思います。
まず、岡崎が、スローインを投げる駒野に寄って行きます。岡崎はディフェンダーの位置を後ろを振り返って何度も確認します。そして(相手を)引っ張り込んで行って、岡崎の後ろにできたスペースを、自分で使う。「自分で作ったスペースを自分で使う」というプレイですが、ボールに寄って行ってできた自分の背後のスペースへ、キュッとスピードを上げて、裏を取ります。
そのタイミングに合わせて駒野がボールをスローインで入れます。相手のセンターバックが慌ててカバーに行って、当然ここのボックスの中に侵入されますから、イラクの選手達は、全員ボールウォッチャーになっています。
そして、前田はこういうパターンでくることが分かっていますから、最初からうまくそのタイミングに合わせていいポジションを取った。そこに岡崎がアウトサイドで、非常にうまく前田に合わせて、前田は合わせるだけのゴールでした。
この3人の意思が統一されて、それがうまくつながったゴールということが言えると思います。
セットプレイというのは、コーナーキック、フリーキックだけではなくて、実はスローインが勝敗を分けることもある。まして、このイラク戦においてはこのゴールだけでしたから、非常に価値の大きいゴールだったと思います。
【ゴールのポイント!!】
1.岡崎慎司のボールを受ける動き
2.前田遼一のゴール前でのポジショニング
3.セットプレイとしてのスローインの重要性
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著者プロフィール
福田正博 (ふくだ・まさひろ)
1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。