【日本代表】ザックジャパンのCBに今野泰幸が起用され続けるのはなぜか?

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ザックジャパンのCBでコンビを組む今野泰幸(右)と吉田麻也(左)ザックジャパンのCBでコンビを組む今野泰幸(右)と吉田麻也(左)福田正博 フォーメーション進化論 vol.19

 フィールドプレイヤーの中で、とくにCBは失敗ができないポジションだ。欧州のビッグクラブであれば、1回のミスも許されない。たったひとつのミスが勝敗を分けるし、ちょっとしたポジションのズレで失点することもある。つまり、自らのミスでゲームが決まってしまう。前線の選手であれば、ミスをしても後ろの選手がカバーできるが、CBやGKは後ろに誰もいないのだからそうはいかない。後ろに味方がいるかいないかでリスクの度合いはまるで違う。

 また、CBは自分がボールを持っていないシチュエーションがほとんどなので、「まさか」と思うシーンや局面を、経験を積むことで減らしていく必要がある。あわてて混乱すると、迷って判断が遅くなり、ミスもしやすくなる。それが失点につながる。そのことを経験し、痛い目を見ることで、学んでいくポジションでもある。以前対応したことのある局面、あるいはそれに似ているシーンであれば、経験をもとに準備ができるし、落ち着いて対処して守ることができるようになる。

 CBは何よりも安定感が重要で、周囲に安心感を与えられる存在でなくてはいけない。そのためには選手の性格によって向き不向きもある。

 たとえば、代表と浦和で一緒だったCBの井原正巳(現・柏コーチ)とFWの私は性格が正反対といえる。試合中、井原はずっと同じテンションで安定して落ち着いているが、私は上がって下がってと、テンションが一定のことはあまりなかった。エネルギーをためて、それを一気に上げていくことでゴールにつなげていたと言えばいいだろうか。そうしたキャラクターの違いは、ピッチを離れた普段の生活にもそのまま表れていたと思うし、実際、井原と食事をしているときなどにそう感じることが多かった。
基本となるのは4-2-3-1。これでアジアカップを制した基本となるのは4-2-3-1。これでアジアカップを制した
 そういう性格面でも、CB向きとそうでない選手はいると思うし、相手のアタッカーからいろんなことをしかけられるポジションなので、「おっちょこちょい」や「お調子者」では務まらない。その意味では、現在、日本代表のCBである今野泰幸はまさにCB向き。堅実な、より確実なプレイを選ぶ大人の振る舞いができる実直な人柄でないとできないポジションということだ。

 今野は、ザッケローニ監督が就任してからほぼ全試合に出場している。では、彼はなぜ重用されているのか? それは、ザッケローニ監督が志向するサッカーのスタイルに一因がある。

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著者プロフィール

  • 福田正博

    福田正博 (ふくだ・まさひろ)

    1966年12月27日生まれ。神奈川県出身。中央大学卒業後、1989年に三菱(現浦和レッズ)に入団。Jリーグスタート時から浦和の中心選手として活躍した「ミスター・レッズ」。1995年に50試合で32ゴールを挙げ、日本人初のJリーグ得点王。Jリーグ通算228試合、93得点。日本代表では、45試合で9ゴールを記録。2002年に現役引退後、解説者として各種メディアで活動。2008~10年は浦和のコーチも務めている。

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