サッカー日本代表は最強&ベストメンバーなのに人気低下? ワールドカップ予選に残席あり

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki

連載第4回
杉山茂樹の「看過できない」

「日本代表史上最強説」が最初に広まったのは、2014年ブラジルW杯を控えたザックジャパンの時代だった。W杯本大会ではグループリーグ最下位と、見事に期待を裏切ったが、それまでのプロセスはいかにも強そうに見えた。以降、この最強説は"煽り"には欠かせない手法として、何かにつけ用いられるようになった。

 もっとも、サッカーは足をメインで使うがゆえに、常に改良の余地が残されている競技だ。相手のプレスがきつくなれば、それに比例するように選手のボール操作術は向上する。競技力は右肩上がりなのが当たり前という特性に従えば、現状は常に過去を上回った状態にある。「史上最強」は当たり前で、それを騒ぐのは非サッカー的なのである。ザックジャパンより西野ジャパン、西野ジャパンより森保ジャパン。そしてその1期目より2期目のいまこの瞬間が一番強い。そうしたサッカー独得の姿を忘れ、無邪気に喜んでいれば世界から置いていかれる。

 つまり日本サッカー史上、第2期森保ジャパンのいまが一番強い。煽るつもりはないが、対世界という相対的な視点を加味しても、それは許されそうな解釈であることも事実なのだ。

 欧州サッカー界に構築されているヒエラルキーのなかに、日本人選手がどう分布し生息しているかを過去と比較すれば、それは確固たるモノになる。今季13人を数えそうなチャンピオンズリーガー。UEFAランク1位のプレミアリーグには5人を送り込んでいる。スペインの名門、レアル・ソシエダに所属していても、それだけで胸を張ることができない時代が訪れるとは驚きである。

中国戦に向けて調整する遠藤航、三笘薫ら日本代表の選手たち 後方は埼玉スタジアム photo by Kyodo news中国戦に向けて調整する遠藤航、三笘薫ら日本代表の選手たち 後方は埼玉スタジアム photo by Kyodo newsこの記事に関連する写真を見る「史上最強の看板に偽りなし」と言いたいところだが、W杯アジア最終予選を前にした現在、それは煽りの道具になり得ていない。日本代表の訴求力は思いのほか低い。この原稿を書いているのは中国戦の前日に当たる9月4日だが、会場となる埼玉スタジアムには依然として席に余裕がある。代表戦の観戦チケットは、いつのまにかプラチナペーパーではすっかりなくなってしまった。

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著者プロフィール

  • 杉山茂樹

    杉山茂樹 (すぎやましげき)

    スポーツライター。静岡県出身。得意分野はサッカーでW杯取材は2022年カタール大会で11回連続。五輪も夏冬併せ9度取材。著書に『ドーハ以後』(文藝春秋)、『4-2-3-1』『バルサ対マンU』(光文社)、『3-4-3』(集英社)、『日本サッカー偏差値52』(じっぴコンパクト新書)、『「負け」に向き合う勇気』(星海社新書)、『監督図鑑』(廣済堂出版)、『36.4%のゴールはサイドから生まれる』(実業之日本社)など多数。

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