パリオリンピック男子サッカー スペインの名指導者が日本の敗因を分析「明らかな決断のミス」 (2ページ目)

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki

【変更によりスペインが息を吹き返した】

「そして39分、三戸からのパスを受けた藤田はマークを外しており、スルスルと持ち上がり、細谷(真大)の足元にパス。細谷は背負いながらターンし、見事なゴールを決めた。ところが、オフサイドの判定で取り消されることになった。映像で見ると、確かに藤田の足がオフサイドラインにかかっていた。レアなケースだが、オフサイド以外の何物でもない。

 それよりも私が気になったのは、後半に向けての日本の戦い方だ」

 エチャリはそう言ってから、戦術的な指摘をしている。

「前半の日本は間違いなくいい流れだった。攻守が機能していた。にもかかわらず、なぜ山田(楓喜)を下げ、藤尾と細谷のツートップにしたのか? 得点がほしかったとしたら、中盤の厚みを失うべきではなかったし、サイドに起点を残すべきだった。

 結果的に、この変更がスペインの息を吹き返させてしまったのだ。

 後半、スペインはポゼッションで日本を上回る。フェルミンが躍動するようになり、前半は沈黙していた(アイマール・)オロスもサイドで存在感を示し、アベル・ルイス、バエナも好機を得た。ボールを持つことをディフェンスに用いながら、攻撃でもアドバンテージを作った。

 一方で、日本はなかなかゴール前まで攻められなくなって、主導権を失っていった。攻め手そのものを喪失。混乱も生じ始めていた。

 76分、日本はCKを与えると、致命的な戦術的ミスを犯している。CKの守りで、ペナルティアークに人を置かないなど、基本的なエラーである。そこは攻撃のリバウンドも含め、必ずケアしなければならない。高いレベルではミドルの精度の高いシューターが何人もいるからだ。それは監督指導講習で教える"初歩"と言える。

 その結果、フェルミンに直接ボールを通されてしまい、自由にコントロールされ、時間を与えてシュートを打たれてしまった。必然の失点だ。

 2-0とされたことにより、日本は苦しくなった。それでもCKから高井(幸大)がポスト直撃のヘディングシュートを打っている。しかし、それが限界だった。86分には、やはりCKの守りでクリアし切れず、アベル・ルイスにとどめを刺された」

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