トルシエが見た森保ジャパンの現状「一部の選手のメンタリティが崩れてしまっていた」 (2ページ目)

  • 篠 幸彦●取材・構成 text by Shino Yukihiko
  • フローラン・ダバディ●通訳

【日本はGKとDFの連係がよくなかった】

――ベトナムの2得点というのは、日本にとっては教訓となる失点だったと思います。日本から得点を奪うために、どういった準備をしてきたのでしょうか。

トルシエ 現代サッカーにおいてセットプレーが重要であることは今に始まったことではありません。格下のチームが格上に勝つ方法として、セットプレーが一番の近道だと思います。

 流れのなかで点を取るためには、長いポゼッションから相手のブロックを揺さぶって隙を見つけなければいけない。それは、ボールを保持することができない格下チームにとって難しいことです。

 あるいは、カウンターの場面ではトップスピードのなかで高い連係が求められるので、それも簡単ではありません。セットプレーであれば、決まった形でのコンビネーションなので、1週間で徹底的に練習すれば準備ができます。

――1点目はニアゾーンに入った選手が後方へフリックし、そのボールがそのままゴールに入りました。

トルシエ あの形は(自分が)日本代表を率いた時代にも使っていました。速いボールをニアポストへ蹴るというのは、私が最も好きなコーナーキックのパターンです。

 パターンとしては、まずひとり目の選手がニアゾーンからDFを引き連れて外へ逃げ、空いたニアゾーンにふたり目の選手が入り、そこへ速いボールを入れる。本来はそこでふたり目の選手はボールに触るだけで、次の3人目の選手が中で押し込むというのがパターンでした。あの時はたまたまふたり目のフリックしたボールが入ってしまった、というのが正直なところです。

――2点目は中央よりの位置のセットプレーからでした。

トルシエ 2点目のファーサイドでの空中戦の競り合いは、身体能力も含めて日本が上のはずなので、勝てたことにちょっと驚きました。あの時間帯というか、日本はGKとDFのコミュニケーション、連係があまりよくなかったことで、一瞬だけ躊躇したのかもしれない。そのおかげで隙があったのかもしれませんね。

【日本がベスト8で敗退したのはモチベーションの差】

――日本は今回のアジアカップで優勝候補と言われながらベスト8に終わり、成績は振るいませんでした。日本にはどのような問題点があったのでしょうか。

トルシエ 私はチームをなかで見ているわけではないので、難しい質問ですね。ただ、現代サッカーでは、強豪とその他のチームとの力の差が縮んできたことで、どの強豪チームでも90分間のハードワーク、球際の激しいプレス、強いメンタリティを保たなければ、簡単には勝てない時代になりました。

 また、日本や韓国のように大会の本命であることは、大きなプレッシャーになります。大会が進むにつれ、試合に勝っていくことで徐々にそのプレッシャーから解放され、エンジンがかかっていくものです。その途中では重圧に晒されながら、歯を食いしばって戦うしかないわけです。

 しかし、実際はそうした本命と言われた国々、サウジアラビアやイラン、オーストラリアも、日本と同じように敗退しました。同時期に開催されたアフリカネーションズカップでも、セネガルやカメルーン、モロッコ、アルジェリア、チュニジアも敗れました。

2 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る