にわかに高まる「PK論争」。W杯ベスト8進出を目指す日本代表もその対策を考えるべきか (3ページ目)

  • 浅田真樹●文 text by Asada Masaki
  • photo by JMPA

 また、PK練習についても、ワールドカップ期間中には「(登録メンバーを)4チームに分けて、毎日やっていた」とのことで、オランダ代表がいかにPK戦を重視していたかがうかがえる。

 もちろん、そうした対策が必ずしも結果に結びつくとは限らない。

 事実、オランダは準々決勝でアルゼンチンにPK戦の末に敗れている。しかも、「練習では1本もミスしていなかった」(フックコーチ)という、キャプテンのフィルジル・ファン・ダイクが失敗してのPK負けである。

 せっかくの準備も無駄だった、のもかしれない。

 それでもフックコーチが、「勝てる保証はないが、成功する確率を上げることはやるべき。自分たちは最善を尽くした」と話すように、PK戦というルールが厳然として存在し、その結果次第で勝ち上がれるか否かが決まる以上、何らかの対応策を講じる必要があると考えることは、決して不自然なものではないのだろう。

 翻(ひるがえ)って、日本代表である。

「そこまでしてでも、という勝利への渇望があるんだなと思った」

 オランダ代表の事例を聞いた反町技術委員長はそう語り、すぐさま日本代表でも何らかのPK戦対策を施すかどうかについて明言はしなかったものの、「用意して負けるのと、しないで負けるのでは違う。決勝トーナメントに4回行って、50%がPK負け。考えないといけない」と、危機感を口にした。

 PK負けでは、どうしても失敗したキッカーに注目が集まりがちだが、日本がワールドカップと五輪とで経験した計3度のPK戦敗退を振り返ると、日本のGKが相手キッカーのシュートをセーブしたことがない。

 それを考えれば、オランダ代表のようにPKに強いGKを用意するという発想があってもいいのかもしれないし、キッカーの順番の決め方やメンタル的な準備なども含めれば、まだまだやれることはいくらでもあるだろう。

 ただし、PK戦に特化した準備が決して効率のいいものではないのは事実。やれるならやったほうがいいに決まっているが、だからといって、もっと積極的にやるべき、と声高には言いにくいのも確かだ。

 そもそも特別な準備が必要なのか。仮に必要だとして、どれだけの手間や時間をかけてもいいものなのか。

 PK戦で2度も涙を呑んでいる日本としては、その必要性は感じつつも、悩ましいところである。

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