スペインの名伯楽が日本代表に「欠かせない」と評した選手は?「彼がそのポジションに入って理想的な形になった」

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

「正直、引き分けで終わる試合だと思っていた」

 スペイン人指導者、ミケル・エチャリはそう言って、日本がオーストラリアを終盤の得点により2-0と下した試合を振り返っている。

 過去3度のW杯で、エチャリは日本代表の戦いを見守り、克明に分析してきた。フアン・マヌエル・リージョ、ウナイ・エメリ、シャビ・アロンソも師事する慧眼は、多くの指摘を的中させている。今回のW杯予選では終始、森保ジャパンの本大会出場を疑わず、アンカー起用(4-3-3)を推奨した。

「森保一代表監督、そして代表テクニカルスタッフに対して敬意を表したい。ワールドカップ出場決定で、大変な仕事が報われた思いだろう。偉大な勝利だ」

 祝福のメッセージを送ったエチャリは、オーストラリア戦の日本をどう見たのか?

ポジションを変えながら攻守のバランスをとっていた日本代表の遠藤航と田中碧ポジションを変えながら攻守のバランスをとっていた日本代表の遠藤航と田中碧この記事に関連する写真を見る「日本は、酒井宏樹、大迫勇也、冨安健洋の3人の主力が不在だったが、フォーメーションは同じだった。4-3-3で、守備時には4-5-1になる。今やチームに定着した戦い方になっている。

 日本は『速さ』に特徴が出た。ボールを奪った瞬間、前(相手ディフェンスの裏)へ入れる。浅野拓磨、伊東純也の走力を生かす狙いだろう。サイドバックの長友佑都も果敢に高い位置をとった。

 これはオーストラリアが、高いラインを引きながらプレッシャーは少なく、日本にいたずらにスペースを与えていた、という側面もあるだろう。組織としてやや稚拙だった。墓穴を掘り、大量失点を浴びていてもおかしくはなかった。

 前半31分、日本は右サイドを伊東が突破し、左から真ん中に突っ込んだ南野拓実に完璧なクロスを合わせるが、ヘディングシュートはバーを叩いた。得点には至らなかったが、すばらしいプレー精度だった。ふたりの関係性は試合を重ねるたびに高まっている。

 伊東は縦のスピードが脚光を浴びるが、中に入ってストライカーのような動きをすることもできる。どちらもできることで、ディフェンダーを消耗させられる。南野はサイドからゴール前へ入る動きに向上が見られる。エリア内でボールを受け、足を振れる選手だけに、相手センターバックに脅威を与えることできる。前者は得点を量産し、後者は得点数では伸び悩むが、アジア予選でチームの攻撃を牽引した点では共通だろう」

 エチャリはそう言って、ふたりのアタッカーを高く評価した。

1 / 3

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る