森保監督はなぜ大迫勇也に固執するのか。日本に得点を奪えるカードは揃っている

  • 小宮良之●文 text by Komiya Yoshiyuki
  • photo by Reuters/AFLO

カタールW杯アジア最終予選特集

 森保一監督は、大迫勇也に対して幻想を抱いているのではないだろうか。

 大迫のポストワーカーとしての質の高さは、日本サッカー史上でも一、二を争う。2018年のロシアW杯では、前線のプレーメーカーとして攻撃を活性化。森保ジャパン発足当時も、南野拓実、堂安律、中島翔哉と近い距離を保つことで、すばらしい連係を生み出していた。

 しかし、今年夏にJリーグ、ヴィッセル神戸へ移籍してからは、ケガもあって、トップフォームには程遠い。裏に抜けたり、サイドへ流れたりするプレーの量や質は低下し、ボールが収まらなくなっている。そもそも、ゴールに向かう迫力がない。

 ベトナム、オマーンとの日本代表アウェー連戦で大迫は先発出場したが、完全にブレーキになっていた。勝負どころで使ってもらえたなら、いい仕事ができるかもしれないが、2試合連続先発出場は厳しい。消耗からかパワーが出ず、怖さはなかった。それでも大迫起用を強行するのは、「指揮官が幻想に囚われている」と言わざるを得ない。

ベトナム戦に続いてオマーン戦に先発、後半43分までプレーした大迫勇也ベトナム戦に続いてオマーン戦に先発、後半43分までプレーした大迫勇也この記事に関連する写真を見る「自分は、誰が何を言おうともベンゼマのプレーを信じている」

 かつてレアル・マドリードを率いていたジネディーヌ・ジダン監督はそう言って、得点数が伸びずに猛烈な批判を受けていたカリム・ベンゼマについて語り、全力で擁護した。その後、ベンゼマは勝利につながるポストプレーで存在感を見せ、チームが勝利を重ねて、ジダンは自らの見解の正当性を証明している。頑固さが初志貫徹となって吉と出た。

 だが、森保監督の意固地は頑迷さにしか見えない。先述したように、大迫の不調は明らかなのだ。では、日本代表の現状は幻想にすがらざるを得ないのか?

 古橋亨梧は、怖さを与えられるアタッカーである。日本人FWとしては、最もゴールの匂いを濃厚に漂わせる選手と言えるだろう。事実、所属するセルティックではゴールを決め続けている。

 オマーン戦でも、古橋がボールを持つたび、敵ディフェンダーには戦慄が走っていた。

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