岡田武史が森保一監督は「いいリーダーになる」と期待。その理由とは (2ページ目)

  • 村上佳代●取材・文 text by Kayo Murakami
  • photo by AFLO

新しい発想は「制約」から生まれる

遠藤 岡田さんは著書『岡田メソッド』(英治出版)で、「まずは型をきちっと身につけることで、型を破れるようになる」と説いていますよね。

岡田 僕もずっと、選手に自由を与えて自分で判断させようとしてきたんだけど、自由からはあっと驚くような発想は生まれないんじゃないかと。ゆとり教育がスタートしたとき、「自分で好きなものを見つけなさい」と言われても、大半の子どもは何をしたらいいかわからなくなってしまった。スポーツに限らず、今は導いてあげるコーチングが大事と言われていますが、最初のうちはティーチングもやっぱり大事ですよ。

遠藤 私は昨年まで北海道にあるコープさっぽろという生協の有識者理事をしていたのですが、とてもいい経営をしています。生協なので北海道から出ることができないなかで、新しい事業を次々と生み出して、今も成長を続けています。「制約」が組織に与えるパワーはすごく大きいなと実感しました。「制約」があるから人はクリエイティブになれるということを教えられましたね。

岡田 なるほど、そう考えればいいんですね。

遠藤 聞いた話ですが、トヨタの生産ラインでは、たとえば10人で車の組付けをはじめて、うまく回るようになると1人抜いてしまうそうです。突然9人でやれと言われる。もちろん、最初は9人では回りません。でも、みんなで工夫するとやがてできるようになる。そして、今度はまた1人抜いて8人でやらせる。改善を続けていくためのトヨタの知恵なんですね。「制約」を与えると、みんなが知恵を出し合い、人は成長していく。トヨタでは、人の知恵は無限であると考えられているんです。

岡田 サッカーでも、身体能力が高い選手は緻密なポジションを取らない傾向がありますね。後から追いかけても、なんとかなっちゃうから。でも、レベルが上がって、たとえば日本代表に入るとダメになる。自分より能力が高い選手とマッチアップしたら、対応できなくなるんです。

遠藤 体が小さい人は、ほかの能力をどうやって活かすかを考えないと生き残れないですからね。スポーツの世界でも、クリエイティブになるためには何かしらの「制約」があったほうがいいのかもしれません。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る