女子サッカー選手が描く新しい地図。未来のための「なでしこケア」 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 この日会場で配布された資料をはじめ、会場設営なども、選手たちとその意志に賛同した有志によってすべて運営された。そこに選手ひとりひとりの意志がなければ、これだけ多くの人たちの協力は得られなかっただろう。設立イベントでは、「公益財団法人 難病の子どもとその家族へ夢を」との協定宣言と調印式も行なわれ、今後の活動への決意を感じさせる1時間だった。
 
「想像以上に選手たちからの反響があって本当にホッとしています」

 設立イベントを終えて、試合を控えていたことで会場に足を運べなかった選手たちから、続々と反響が届いたことに安堵の表情を浮かべたのは、この団体創設のきっかけとなる声を上げた大滝麻未(あみ/ジェフユナイテッド市原・千葉レディース)だ。理事兼事務局長ということになっているが、この団体のすべての部門に精通して働く大黒柱である。

 2015年に現役を引退した大滝がFIFAマスターを習得したのは2017年。同期には世界的プレーヤーであるパク・チソンも名を連ねる。

「FIFAマスターというだけあって、パク・チソンをはじめ、サッカー好きが集まってくる。現役中よりサッカー漬けの一年でした。授業が終わってみんなでサッカーして、サッカーを見て、サッカーのことを話す。男女関係なくチャンピオンズリーグを獲った人としてリスペクトしてくれたり(大滝はリヨン時代に女子CLで優勝)、サッカーの力をすごく感じましたね。同時に現役でいる価値を再認識しました」(大滝)。

 帰国すると現役復帰を決断。そして海外でプレーする選手たちと集まった際に、その経験も含め、選手たちがそれぞれの想いを伝えあった。これがなでケア設立の種になる。その想いを形にするノウハウを学んできたばかりの大滝に火がついた。

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