個、任せの限界。アジア相手に失った日本らしさ。森保Jの未来に暗雲...

  • 浅田真樹●取材・文 text by Asada Masaki
  • 佐野美樹●撮影 photo by Sano Miki

 アジアカップの決勝直後、スタンドの記者席から偶然目にした光景が興味深い。

 表彰式がまもなく始まろうかというときだった。試合後の後片づけに追われる、日本のチームスタッフが目に入った。彼らは大きなビニール袋を片手に、ベンチ前やピッチ脇に転がっていた水のペットボトルを拾い集めていた。

 すると、何かに気づいたスタッフがピッチ内に入り、ペットボトルだけではなく、遠目からはよく見えない、小さなものをいくつも拾っていたのだ。

 双眼鏡を使って"ゴミ"の正体を見てみると、それは小さなビニール袋。その何分か前、歓喜に沸くカタールの選手たちには、表彰式で着用するためのマフラーが配られていたのだが、選手たちは包みの袋を破ってマフラーを取り出すと、袋はピッチ上に"ポイ捨て"していたのである。

 昨年のワールドカップ同様、今回のアジアカップでも、日本が試合後のロッカールームをきれいに掃除して帰ったことが話題となった。だが、日本のチームスタッフがきれいにしたのは、ロッカールームだけではなかったわけだ。

 その一方、ほぼ時を同じくして、日本のベンチ脇では、テレビ中継用の選手のインタビューが行なわれていた。

 テレビカメラの前に立っていたのは、大会MVPに選ばれたカタールのFWアルモエズ・アリ。インタビューが終わり、背番号19が仲間たちのところに走り出そうとすると、中継スタッフのひとり(おそらく、地元カタールか、開催国UAEのテレビ局だろう)がスマホ片手に声をかけ、一緒にセルフィーを撮ろうとせがむ姿が目に入ってきた。

 結果的に、彼の企みはAFC(アジアサッカー連盟)のスタッフによって阻止され、未遂に終わるのだが、日本でなら、まずお目にかかることのない光景だった。

 たまたま目にした、微笑ましくも、ある意味で対照的なふたつの行為を取り上げて、事の是非を問おうというのではない。国が違えば、習慣や文化も違い、物事の考え方がまったく違う。それがふたつの行為によく表れていたことが、とても面白く、興味深かかったのだ。

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