2018.07.03

杉山氏、酔いしれる。全てのエンタメを
超えた「考えうる最高の敗戦」

  • 杉山茂樹●文 text by Sugiyama Shigeki 藤田真郷●写真 photo by Fujita Masato

 今回も同じだ。涙なんて溢れそうな気配さえなかった。悲劇にもかかわらず、ウエット度ゼロ。この現場に立ち会ったこと、衝撃的なシーンをこの目で目撃した快感が、それを完全に超えていた。

 ベルギーが後半ロスタイムの土壇場で見せた、鬼気迫るカウンター。足音さえ聞こえてきそうな怒濤の集団的全力疾走について、ロベルト・マルティネス監督は「ペナルティボックスからペナルティボックスまで5秒ほどしかかかっていない」と、試合後の会見で胸を張った。

 まさに恐怖映像として、試合後、数時間経ったいまも、脳裏に焼き付いたままだ。最後の最後に、日本はその襲来を受けた。まさかの展開である。それで試合が終わってしまうとは。スポーツは筋書きのないドラマというけれど、このストーリーを考えることができた人は、いないはずだ。

 そのほんの少し前。日本は相手ゴール前で、直接FKのチャンスを掴んでいた。キッカーは本田圭佑。8年前、南アフリカW杯で日本をベスト16入りに導いた選手だ。圧倒的に押されていたグループリーグ第3戦、対デンマーク戦で直接FKをブレ球で決めたシーンが脳裏に蘇った。

 今回はさすがに入らないだろうと悲観的に眺めていたところ、199センチの相手GKティボー・クルトワは、宙を泳いだ。すかさず、スタジアムのモニタースクリーンに大写しになった再生画像に目をやれば、かなり惜しい一撃だったことに気付かされる。

 そしてその足で、コーナーキックマークに、ボールをセットする本田。観戦するこちら側も、緊張感は欠けていた。正直、8年前を半分、懐かしがる自分がいた。