日本のW杯16強入りには、槙野智章らサブ組の「刺激」が欠かせない

  • 了戒美子●文 text by Ryokai Yoshiko photo by JMPA

 躍進するチームをもっとも複雑な思いで見つめているのは、試合に出られないベンチメンバーではないか。もちろん、勝利はうれしいに違いない。彼らもW杯のメンバーであり、活躍しているのはチームメイトだ。また、次の試合でチャンスが訪れるかもしれないのだから、必死に準備をしておく必要もある。

 本人もそんなことは百も承知だろう。それでも、いつもは明るい槙野智章の様子がちょっと違って見える。練習中や、試合中のベンチではふだんと変わらない。ただ、取材陣が待ち受けるミックスゾーンを通り過ぎるときの槙野からは、早く話を切り上げたい、という空気がビンビンに伝わってくる。

 それはそうだろう。でも、だからこそ彼に聞きたいことがある。

「(サブだからといって)心がけていることは別にないですよ。チームのためにやるだけですからね。特にいつもと変わりなく、やれることをやるだけです。(練習量を調整するための)個人トレーニングはやらないです。休むときは休むし、練習するときはする。メリハリを持ってやっています」

 槙野は練習後、汗をダラダラと流しながら話した。

キャンプ地カザンで、他の控えメンバーとともに汗を流す槙野智章キャンプ地カザンで、他の控えメンバーとともに汗を流す槙野智章 セネガル戦が行なわれたエカテリンブルクから戻ったこの日、カザンの気温は一気に上昇。30度を超える炎天下の午前練習で、槙野は大きな声を出し、ミニゲームからPK練習までをこなしていた。

 そんな槙野に「試合に出たいのではないか」と、ストレートに聞いてみた。一瞬の逡巡があって、答えが発せられた。

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