ヒデと福西の言い合いが象徴する混乱。「ジーコは何も言わなかった」 (2ページ目)

  • 佐藤 俊●取材・文 text by Sato Shun
  • 甲斐啓二郎●撮影 photo by Kai Keijiro

 また、イラン戦に向けては、3バックの一角で重要な存在だった田中誠、さらに左ウイングバックの三都主アレサンドロが累積警告による出場停止だった。4バックを選択したのは、それらの状況を受けてのことでもある。

 だが、突然の4バック採用には選手たちが戸惑った。3バックで結果を残し、その戦いに自信もつけてきただけに、なおさらだ。しかも、練習時間があまりにも少なすぎた。

"カオス"は起こるべくして起きたのだ。

 福西が回想する。

「(中田と自分が衝突した日の)紅白戦の夜、食事の際のレギュラーチームはすごく暗かった。全体の雰囲気もよくなかったね。テーブルではずっとサッカーの話をしていた。Bチームの選手に聞くと、『こうしたほうがいいよ』『こうされたら嫌ですね』とか、いろいろな意見を言ってくれた。ただ、それを聞いても結局、『そうだよなぁ、でも......』という話になってしまう。

 アウェーだし、0-0で勝ち点1を取れればいいじゃんって割り切れれば守備重視でもいい。でもその一方で、俺らはボールを持てるし、『日本のサッカーをしたい』っていう声もあった。結果として、そこでも話はそのまままとまらず、試合前日のミニゲームのときまでずっとその話をしていた」

 チームが混乱した状況にあることを察した場合、通常は指揮官が何らかのアクションを起こすはずである。だが、このときのジーコ監督は、ボール奪取の論争を鎮火させ、選手たちをひとつの方向に導くような指示を出すことは一切なかった。

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