なでしこ、オーストラリア戦の教訓「パスは止めず、トトンと動かす」 (2ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 試合は初戦で課題となった決定力不足を解消するために、並々ならぬ意気込みで臨む攻撃陣の気迫が、開始後すぐさまゴールを呼ぶ。横山の蹴る左コーナーからつないで、最後は田中が押し込んで得た先制点は開始6分という早い時間帯に生まれた。

 しかし、ここからがマズかった。5分後に右サイドを破られ、サマンサ・カーにゴールを許すと、流れは一気にオーストラリアへ。その後も日本のミス絡みで再三ピンチを招き、前半のうちにカーにハットトリックを決められてしまう。後半にはPKを献上し、4失点目。ロスタイムに籾木結花(日テレ・ベレーザ)が一矢報いるも、すでに時間は残されていなかった。

 想像以上に乱れてしまったのは最終ラインだ。冷静に相手と対峙できるはずの坂本のイージーなパスミス、鋭い判断に定評のある市瀬が、空中でボールにヘディングできず引き起こしたカウンターからの失点など、バタつく守備を立て直そうとすればするほど、混乱は深まり、その歪みに引きずられるように中盤もズレていく。FW陣が待ち構える前線の裏を突くパスは全く出なくなってしまった。1失点目は仕方がないにしても、2失点目以降は防ぐ手はあっただけに、悔やんでも悔やみきれない大量失点となった。

 チームの熟成度からすれば、当然の結果かもしれないが、このスコアの差はそれだけではない。確かに日本の技術は高いレベルにある。しかし、オーストラリアはシンプルな攻撃だからこそ、ゴールに向かうための技術を身につけている。オーストラリアの1点目のチャンスを作ったヘイリー・ラソのファーストタッチには、日本とオーストラリアの決定的な差が顕著に表れていた。

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