【なでしこW杯】骨折退場の安藤梢が残した「勝ち点3以上のもの」 (4ページ目)

  • 早草紀子●取材・文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 そして今、なでしこジャパンにかつてない大きな試練が訪れている。日本の決勝点となったPKを生み出したのは安藤のプレイ。大儀見優季(ヴォルフスブルク)からの裏へのパスのタイミングはGKとの1対1の勝負につながる。そのとき、安藤は一切の迷いなく飛び込んだ。左足首を痛めたのはその着地時のことだった。激痛に表情がゆがむ。ただ事ではない症状であることは瞬時に見て取れた。

 一夜明け――安藤のチーム完全離脱が佐々木監督の口から明らかになった。今年に入ってから好調をキープしていた安藤は現在32歳。ベテランらしくないプレイをしたいと心に決めていた。数日前に交した彼女の言葉がよみがえる。

「キレイなゴールが欲しい訳じゃない。体ごと押し込む、そんな泥臭いゴールが欲しいんです」

 安藤が最後に見せてくれたものはまさしく、体ごと投げ出す彼女の求めたプレイそのものだった。また、彼女の存在で光を受けるはずだったのが大儀見だ。この試合でも前半の二人の動きはゴールへの可能性にあふれるものだっただけに、失ったものの大きさを痛感する。

 だからこそ、安藤が体を張って残したこの勝ち点3を無駄にすることなど、誰ができるのか。大きすぎる代償の代わりに持ち帰ることができるのは何か。安藤の想いをチームに残し、彼女に胸を張れるチームにしていくしかない。なでしこたちが本気で強くなるのは、今しかない。

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