山口蛍、代表ボランチ3番手が語る「黒子の覚悟」

  • 佐藤 俊●文 text by Sato Shun
  • 益田佑一●撮影 photo by Masuda Yuichi

ブラジルW杯まで16日
『ザックジャパンの完成度』
連載◆第32回:山口蛍

 昨年7月の東アジアカップで日本代表デビューを果たした山口蛍(23歳)。同大会でMVPを獲得し、持ち前のボール奪取能力と攻撃センスがザッケローニ監督に評価されて、遠藤保仁、長谷部誠に次ぐ、ボランチ「3番手」の座を手にした。ブラジルW杯メンバー入りも早々に確実視され、今や長く戦列を離れていた長谷部からポジションを奪いそうな勢いである。

「レギュラーとか、全然ですよ」

 山口はそう言って一笑に付すが、表情には"やれる"という自信と余裕が感じられる。2012年ロンドン五輪代表では、44年ぶりのベスト4進出の原動力となった。今季は、所属のセレッソ大阪でキャプテンに指名された。そうした経験と責任が、今の山口の自信につながって、気持ちに余裕を生み出しているのかもしれない。

代表合宿で精力的な動きを見せていた山口蛍。代表合宿で精力的な動きを見せていた山口蛍。 昨年の夏頃、山口の代表への思いはまだ薄かった。

「当時は、代表って言われても、あまりピンとこなかった。正直、代表に対してそれほど強い思い入れがなかった。すでに代表チームは完成されているイメージがあったんで、その中に入ってプレイするのもしんどいだろうな、と。それなら、次のロシアW杯(2018年)で中心選手になれるようにしよう、と考えていました」

 東アジアカップでは、DF栗原勇蔵とともに3試合すべてに出場。その起用を見てもザッケローニ監督からの信頼の高さがうかがえた。その後も山口は日本代表に招集され続け、11月の欧州遠征(2-2オランダ、3-2ベルギー)では2試合ともにスタメン出場。チーム内での存在感を増していった。

 そうして代表に招集され続けると、大抵の選手は代表への帰属意識が高まり、生き残りを強く意識するようになる。だが山口は、それでも代表への執着心は強まらなかったという。

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