【なでしこ】U-17女子W杯、準決勝で高まった団結力。目指すは「世界一」 (2ページ目)

  • 早草紀子●文・写真 text&photo by Hayakusa Noriko

 さらに33分に追加点が生まれる。右CKのチャンス。キッカーのMF杉田妃和(藤枝順心高)はニアサイドに流れるようMF長谷川唯(日テレ・ベレーザ)に要求。その通りに走り込んだ長谷川の足元にボールはピタリ。これを長谷川は当て損なうが、ファーサイドにボールが流れたところを市瀬が押し込んだ。

 そして、後半立ち上がりにエースのゴールは生まれた。52分、杉田から左サイドへスライドした長谷川に入ったボール。一瞬、中を確認した長谷川は、小林がスルリとDFの裏を取ろうとしている姿を確認し、間髪を入れずに中に折り返す。フリーとなった小林は落ち着いてこれをボレーで決めた。

 待ちに待ったゴール。小林には焦りがあった。これまで、圧倒的な攻撃力で勝ち上がってきた日本。そのエースポジションを担っていながら、ここまで小林のゴールはグループステージの最終戦、格下・ニュージーランド相手のPKのみ。到底納得できる成績ではなかった。

「(小林は)焦っているように見えた。でも、必ずボールはこぼれてくるし、チャンスはあるからって話をしていました。自分のパスから里歌子(小林)が決められてよかった。チームのエースなんで」とは長谷川の言葉だ。

 誰もがエースのゴールを待ち望んでいたのである。

 ラッキーなこぼれ球ではなく、流れの中からの得点に、小林にも安堵の表情が浮かぶ。ゴールを引き寄せるために、小林自身も動きを見直した。

「前の試合では運動量も少なかったし、動き直しができてなかった」(小林)。

 準決勝では、ボールをもらうために何度も、ポジションを下げては動き直す。ゴールこそ生まれていなかったものの、光るアシストを繰り返し、お膳立てはしていた小林。自分を納得させるために必要なものはゴールだけだった。エースのゴールで勢いをつけた日本はさらに杉田のPKで加点する。ロスタイムに今大会初となる失点を、スローインからカステジャノスに決められるが、4-1でベネズエラを退け、決勝進出を決めた。

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