2013.05.23

初招集!異能のストライカー工藤壮人が「日本代表」を語る

  • 小宮良之●文 text by Yoshiyuki Komiya
  • photo by AFLOSPORTS

22日に行なわれたACL決勝トーナメント1回戦、全北戦でもゴールをあげ、ベスト8進出に貢献した工藤壮人(柏レイソル) 連載・ブラジルW杯を狙う刺客たち(4)~工藤壮人(柏レイソル)

 工藤壮人は、プロサッカー選手として何を武器としているのか。

 多くのサッカー関係者やサッカーファンはその問いに即答できない。まず、体格は平均的だ。のんびりと歩く姿は、クラブスタッフのようにも映る。足は遅くはないが際立って速いと言えず、心肺機能が目を引くわけでもなく、運動競技者として特筆すべき点はない。かといって、観衆を陶酔に導く華麗なボールテクニックがあるわけでもなし、網を突き破らんばかりのパワフルなシュートを打つわけでもない。

 実は工藤本人が、「武器は何ですか?という問いを投げられると困ってしまうのです」と白状するほどである。

 しかしロンドン五輪世代の若きストライカーは、柏レイソルにおいて着々と実績を残している。2010年シーズンにJ2リーグ優勝、2011年シーズンにJ1リーグ優勝、2012年シーズンに天皇杯優勝を経験。リーグ戦で10,7,13点とコンスタントに得点を記録し、23歳にして強豪クラブの旗頭になっている。今シーズンはアジア・チャンピオンズリーグの決勝トーナメント進出に貢献。得点したリーグ戦の試合は不敗神話が続く(5月18日のセレッソ戦で敗れ、28試合で記録はストップ)など、今やクラブの命運を背負う。

 そして2012年夏には、ブンデスリーガのフォルトゥナ・デュッセルドルフの関係者が工藤に興味を持ち、試合視察に訪れている。正式契約交渉には至らなかったものの、世界から注目されたことは間違いない。

 彼らは工藤のどこに惹かれたのか。そして武器とは――。

 工藤の物語の冒頭は、"小さな弔い合戦"で始まるべきだろう。小3のとき、彼は「自分が見返してやる」と小さな胸に決意を秘めた。

 実はその1年前、三つ年上の兄が柏の育成組織入団テストで落とされる姿を目の当たりにしていた。以来、「自分が入ってみせる!」と"敵討ち"のための鍛錬に余念がなかった。学校が終わるとすぐに帰宅、帰ってきた父親と街灯も乏しい中、生えている木々を敵に見立ててドリブルして、特訓を積んでいた。

「必死になっている親父の期待にも応えたい」
 健気な少年はそう思っていたという。

 ただ、義務感でやっていたのではない。むしろボールを追いかける時間が、たまらなく楽しかった。

 ところが、肝心の"果たし合い"では足がすくんでしまったという。