【名波浩の視点】フランスに快勝した日本は、11年前と何が違ったのか (2ページ目)

  • 藤田真郷●撮影 photo by Fujita Masato

 また、前線でボールが収まらなかったのも、防戦一方になった原因。それは、1トップのハーフナー・マイクだけを責める問題ではない。全体的に後ろに重心が傾いて、トップ下の中村憲剛さえも守備に力を注がざるを得ない状況だったため、ハーフナーが孤立。サイドに流れてタッチライン際でボールをキープするのが精一杯だった。本来なら1トップの選手が深さを作って、トップ下の選手がそれを素早くサポート。さらにその動きに対して、サイドの選手が連動していくのがザッケローニ監督の求める形だと思うのだが、フランスの激しいプレッシャーと前がかりの守備によって、まったく攻撃の深みを作ることができなかった。

 それでも、その劣勢だった前半をよく踏ん張ったことが、勝利につながった。後半に入ると、攻め続けたフランスのほうが体力を消耗し、徐々にプレッシャーも緩くなっていった。日本はボールをつなげるようになり、チーム全体が前を向ける回数も増えて、いいリズムをつかんでいった。途中、リベリーが入ってから再びフランスが息を吹き返したが、川島永嗣のファインセーブなどで凌いで、相手CKからのカウンターで会心の一発を決めた。こぼれ球を拾って攻め上がった今野泰幸と、それに追随した長友の「ここだ」という好機を逃さない動き出しはさすがだったし、最後にきっちり仕留めた香川も良かった。相手のブロックがきつい中で、よく決めたな、と思う。これで香川は何か吹っ切れて、本来の輝きを取り戻してくれるのではないだろうか。

 こうしてフランスに勝利した日本だが、結果だけでなく、11年前からの成長を随所に見せてくれた。ひとつは、ディフェンス。90分間、選手たちは相手とのフィジカルの差を感じていたと思うが、それを認識しながらも、最後まで屈することなく、戦い抜いた。フィジカルの差をはねのける術というか、個々の守るセンスとか、組織で守り切る巧みさが今の日本にはあって、川島を中心にそれをやり切ったことは非常に素晴らしかった。

 そして、ベンゼマがいようが、リベリーが出てこようが、誰もが名前負けせずに戦っていた。それこそ11年前とは明らかに違って、勝利につながった最大の要因だと思う。それも含めて、あのぐちゃぐちゃのピッチで、あれほどパワフルに挑んできたフランスに対して、勝ち点3を取るというのは、ヨーロッパの強豪国でも難しいこと。これは決して大げさな話ではなく、それだけの力、高いポテンシャルを今の代表チームは持っているのだな、と実感した。

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