「ほんま、天才ですわ」 恩師が絶賛した平野佳寿の知られざる素顔 42歳までマウンドに立ち続けた男の原風景 (3ページ目)
「スライダー、いいですか?」
これも意外だった。この寒さである。真っすぐだけでもありがたいと思っていたのに、変化球まで投げてくれるという。
ストレートと同じ軌道から、キュッとひねったように曲がるスライダー。それもまた低い。1球1球、じつに丁寧に投げてくれる。
ああ、そうか。彼にとって「今日」は、取材を受けるための特別な日ではない。いつもと同じ「練習」の一日なのだ。だからこそ、今日のコンディションに合わせた出力で、一球一球を丁寧に投げ込んでいる。その姿に、すでに「プロ」を感じてしまった。
縦に大きく割れるカーブも見せてくれた。いったん浮き上がったように見えたボールが、そこからストーンと落下する。地面すれすれで、ようやく捕球できた。
「フォークもいいですか?」
ええっ、フォークまで投げてくれるんだ......。そう思った直後だった。最初の1球が、はじめから低めの軌道で飛んできて、ホームベースの手前でショートバウンドした。
「あっ!」
反射的に体を沈め、プロテクターのいちばん下あたりでボールを止めた。それが、私にとって記念すべき「ストッピング」の1回目となった。
【ボディバランスと柔軟性のお化け】
「う〜ん、そう言われても、どうなんですかねぇ。正直、ようわからへんというのが、本当のところで......」
京都生まれの京都育ち。そんなイメージどおりの、おっとりとした話し方だった。学生球界ナンバーワン右腕、ドラフト1位の有力候補......。そんな話題に差しかかった時のことである。
「ちょっと成績いいとか言っても、こっち(関西)でのことですし、こっち以外の野球はわからへんし、自分がどのぐらいにいるのかって言われても......。逆に、どう考えたらいいんですか?」
そう問い返してきた表情にも、深刻さはまるでない。どこか他人事のようでもあった。ガツガツせず、ことさら熱く見せようともしない。あくまでもフラットで、マイペース。接すれば接するほど、その底知れない器の大きさに引き込まれていくようだった。
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