命の危険を感じていた田中正義の剛球 紐が切れかけたミットを見て感じた「本当にやばい投手」の条件 (2ページ目)
【ドラフト直前の緊迫したブルペン】
そして2年後、その予感が現実となる日がやってきた。最上級生となった田中は、心身ともに充実期を迎えていた。そんな彼のボールを受けるため、私は東京・八王子市にある創価大グラウンドへ向かった。
正直、この投手だけは回避したかった。命の危険を感じていたからだ。ふつうに投げて150キロ、しかも190センチ近い長身とあの長いリーチから投げ下ろしてくる角度は、もはや想像すらつかない。
田中が4年秋のリーグ戦を戦っていた、その最終週あたりだったと思う。そんな時期に取材のお許しが出たのだから、おそらくリーグ優勝が決まっていたのだろう。
当時の創価大投手陣は、田中のほかに池田隆英(日本ハム)もいて、東京新大学リーグでは無敵の存在だった。雨上がりの煙ったような空気の向こうに、外野で遠投を続ける田中の姿が見える。
長い両の腕を、白鳥のように左右へ目一杯広げて投げる。ひと目でそれとわかる優雅なモーションだ。指先を離れたボールが、浅い角度でグイグイ伸び、なかなか落ちてこないまま、待ち構える捕手の頭上をはるかに越えていく。
ボールを投げるための排気量は計り知れない。あのエンジンパワーが、わずか18.44メートルのなかで凝縮されて炸裂するのかと思うと、正直、こんな小さなミットでよく受け止められるものだなぁ、と不思議に思う。
「正義は、ウォーミングアップ、長いですよ。自分の体のことにものすごく気を配るし、慎重です。ちょっとでも気になるところがあると、絶対投げませんから」
佐藤康弘コーチ(現監督)が言葉をかけてくれ、ちょっと落ちついた。2年春の大学選手権での衝撃デビューから、夏の大学日本代表。オーバーワークから右ヒジを痛めて以来の「ルーティン」だと知った。
ブルペンのマウンドに田中が立った。大きな投手だとは思っていたが、いざ向き合うと想像以上だった。首が長いためか顔の位置がやけに高く見える。さらに上半身の骨格が大きく、肩幅も広い。マウンド上に立つだけで威圧感があり、その体躯は実際の数字以上に大きく感じられた。これなら、マウンドから見下ろしただけで打者は圧倒されるに違いない。
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