セ・リーグ独走の阪神に死角あり 伊勢孝夫が指摘する「タイガース打線の不安要素」 (2ページ目)
では、今年はどうかというと、その"つなぎ役"は2番の中野が担っている。2番がしっかりつないでいるのだから、一見すると問題ないようにも見えるのだが、前述のとおり、6番以降の打線が弱いため、得点パターンは3番・森下、4番・佐藤輝までで止まってしまうことが多い。
事実、チームの306得点のうちこのふたりで124打点を叩き出している。言い換えれば、このふたりが打てないと得点力は一気に落ちる。
【気になる逆転勝ちの多さ】
そしてもうひとつ気になるのは、逆転勝ちが目立っていることだ。序盤にリードを許しながら、中盤以降は投手陣が踏ん張って、終盤に逆転する。自力がある証拠ではあるのだが、一方で中盤まで主導権を握れない"もどかしさ"を感じてしまうのだ。
優勝を狙うチームとしての「強さ」を感じにくいのは、絶対的な勝ちパターンがまだ確立されていないからだろう。たとえ勝っていても、2、3点といった少ない得点をなんとか守り切っているという試合が多い。
少し厳しい見方かもしれないが、打線に限って言えば、岡田彰布監督がかつてチームを優勝に導いた時のような爆発力は、今の阪神からは感じられない。
それでも、このまま5割ペースを維持していけば、余裕を持って優勝を決めるだろう。その理由は簡単で、阪神を追いかけるチームに力がないからだ。巨人、DeNA、中日、広島......いずれも打線はさっぱりだ。昨年優勝の巨人は、岡本和真の故障離脱が大きく、ここまでが精一杯という印象を受ける。
昨シーズンのいま頃、広島が首位を快走していたが、私は「いずれ勢いを失い、巨人、阪神と団子になる」と見ていたが、そのとおりの展開になった。自慢話ではなく、それだけ広島の戦いがいっぱいいっぱいだったのだ。
その点、今の阪神には昨年の広島のような切羽詰まった感じがない。強いて挙げるなら、投手陣の疲労度だ。7月11日のヤクルト戦で村上頌樹が2回6失点したように、投手一人ひとりを見ると、本来のボールではない選手が目立ってきた。
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