【日本シリーズ2024】DeNA日本一の陰に「『嫌われてもいいや』と覚悟して...」短気決戦の心を伝えたメンタルコーチの存在 (3ページ目)

  • 石塚 隆●取材・文 text by Ishizuka Takashi

【短期決戦の"メンタルの持ち方"】

 ポストシーズンに入ってからの雰囲気の変化を遠藤コーチに尋ねると次のように答えた。

「短期決戦には短期決戦の"戦い方"があるように、短期決戦には短期決戦の"メンタルの持ち方"があります。選手だけではなく、周りでサポートするスタッフも短期決戦用に気持ちを切り替えなくてはいけません。オリンピックもそうですが、短期決戦は自分の力の発揮どころだと思って、『嫌われてもいいや』と覚悟して毎日コミュニケーションを取ってきました」

 短期決戦は日程も詰まり、息つく暇もないように思えるが、気持ちの抜きどころというのはあったのだろうか。

「いや、実はそこは抜いていないんです。抜いてしまうと短期決戦はほころびが出てしまうし、負けにつながってしまう。CS後は(ひと息ついて)ほころびが出てしまい、日本シリーズでは連敗スタートになってしまったと思います。そこで、あらためて選手の状態はもちろん、監督、コーチ、スタッフの状態を鑑み、私がその架け橋にならせてもらって、チームが切磋琢磨し、一丸になれるような行動をしていました」

 チームに内に漂っていたピリッとした雰囲気は、このような理由から醸成されていたようだ。

 さらに、遠藤コーチはこんなことも言っていた。

「選手たちは選手たちでミーティングをして、スタッフはスタッフでミーティングをして、自分たちのできることを確認する。まずは自分に与えられた役割を全うすること。結果、うまくいけばいいですけど、ネガティブに引きずってしまうこともある。そこで、三浦(大輔)監督は『忘れろ』という究極の言葉を使いました」

 三浦監督は、とくにポストシーズンに入ってからは「ミスは忘れろ、反省して忘れろ」と語り続け、選手たちを前へ向かせようとしてきた。

 遠藤コーチは、どこか思いを馳せるような表情で続ける。

「選手たちばかりではなく、監督も選手たち以上のプレッシャーがかかっていたと思います。近年では指導者にかかるプレッシャーの研究もされていて、そのためのケアと言ってはおこがましいのですが、監督の頭の整理だったり、背中押しというのは常にさせてもらいました」

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