【日本シリーズ2024】DeNA日本一の陰に「『嫌われてもいいや』と覚悟して...」短気決戦の心を伝えたメンタルコーチの存在
3勝2敗で迎えた日本シリーズ第6戦は、蓋を開けてみれば横浜DeNAベイスターズらしい痛快なまでに"打撃力"が発揮された試合だった。
4回までは4−2のスコアで拮抗するも、5回表に来季から正式にリリーフに転向する濵口遥大が3者凡退で切り抜けて雄叫びを上げた。ファンを煽って盛り上げムードを作ると、その裏の攻撃では押し出しも含め、梶原昂希や筒香嘉智、宮﨑敏郎のタイムリーで一挙7点を奪って11−2。この地点で福岡ソフトバンクホークスの気勢はそがれてしまった。
日本一を決めたDeNAの選手たち photo by Kyodo News
【深読みせずシンプルにスイング】
この試合、まずポイントになったのはソフトバンクの先発の有原航平をどのようにして攻略するかであった。第1戦では7回無失点に抑えられ、攻撃のリズムを作れないままだったが、先制点が重要な短期決戦において、そこをどうにかしなければDeNAに有利に働くことはない。
試合前、攻撃面の戦略を立てる靏岡賢二郎オフェンスチーフコーチは、次のような話をしてくれた。
「前回の傾向はもちろん、違う配球パターンで来る可能性も高いので、それも含めて選手たちにはミーティングで伝えています。また第1戦では、有原投手との対戦経験があまりないとはいえ映像で確認していたのですが、そこに感覚的なギャップがあったと思います。第1戦の対戦経験により、そこは解消されると考えています」
有原の巧みなピッチングはもちろん、捕手の甲斐拓也の打席ごとで異なるリードに手こずった印象もあるが、靏岡コーチはそれについても明確な見解を示してくれた。
「あくまでも対戦するのはキャッチャーではなくピッチャーなので、深読みをすることなく投げてきたボールにシンプルにスイングしていけばいい。狙い球を追い込まれるまでしぼっていこうと伝えました」
明快な指示があれば、打者は雑念を持つことなく打席に入ることができる。結果、有原から4点を奪い、3回でマウンドから引きずり降ろしている。また、その後のリリーフ陣に関しても靏岡コーチは試合前に言及していた。
「リリーバー陣はこれまでとは異なり、先発のスチュワート・ジュニア投手などが投げる可能性が高い。あちらのリリーフ構成が変われば、こっちの攻め方も変わってきます。そこはいろいろな可能性を模索して対策をしています。もちろん勝負の世界ですから傾向やデータでは収まらない部分もあるので、そこもしっかり意識しながら挑みたい」
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著者プロフィール
石塚 隆 (いしづか・たかし)
1972年、神奈川県出身。フリーランスライター。プロ野球などのスポーツを中心に、社会モノやサブカルチャーなど多ジャンルにわたり執筆。web Sportiva/週刊プレイボーイ/週刊ベースボール/集英社オンライン/文春野球/AERA dot./REAL SPORTS/etc...。現在Number Webにて横浜DeNAベイスターズコラム『ハマ街ダイアリー』連載中。趣味はサーフィン&トレイルランニング。鎌倉市在住