【日本シリーズ2024】ソフトバンク育成ドラフト10位入団の「マエジュン」が大舞台で躍動 指揮官も「使い道は決まった」と太鼓判

  • 田尻耕太郎●文 text by Tajiri Kotaro

 ソフトバンクの猛進がついに止まった。2018年日本シリーズ第3戦から今年の第2戦まで続いていた連勝は「14」で途切れた。

 1対1の同点で迎えた5回表。この回から2番手で登板した大津亮介が先頭打者の桑原将志にいきなり勝ち越しソロを浴びると、内野安打と連続四球で招いた無死満塁から筒香嘉智に犠飛も打たれた。結局1アウトしか奪えずに2失点。失意の降板となった。

 プロ2年目の大津は、昨季リリーフで46試合に登板して成果を挙げるも今季は先発に転向した。それでも開幕ローテ入りを果たして7勝7敗、防御率2.87と及第点のシーズンを過ごしていた。この日本シリーズでは先発枠から外れる形になったものの、ロングリリーフもしくは第2先発としての役回りを担うことになっていた。

日本シリーズ第3戦、ソフトバンクの4番手で登板し好投した前田純 photo by Sankei Visual日本シリーズ第3戦、ソフトバンクの4番手で登板し好投した前田純 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る

【育成ドラフト10位でプロ入り】

 その右腕がまさかの早期降板となったわけだ。1対3となり、なおも一死一、二塁。ここでソフトバンクのベンチはドラフト2位ルーキー・岩井俊介をマウンドに送った。

 レギュラーシーズンではすべてリリーフで15試合に登板。一軍に定着していたとは言えないが、マウンド度胸は光るものを見せていた23歳右腕は堂々たる投球を見せた。ひとつ四球を与えて2死満塁としたが、最後は戸柱恭孝を力のない遊ゴロに仕留めてチームの傷口をふさいだ。

 5回裏のソフトバンクは無得点で、スコア1対3のまま。

 まだ2点差の試合中盤。小久保裕紀監督が球審・原信一朗のもとへ歩み寄る。

 4人目の投手で告げた名前は、長身左腕の前田純だった。

 おそらく、ソフトバンクの熱心なファン以外にはあまり馴染みのない投手だろう。沖縄出身、プロ2年目の24歳左腕。中部商業高校出身だから山川穂高の後輩にあたり、その後大分の日本文理大学を経て、2022年育成ドラフト10位でソフトバンク入りした。

 昨年はおもに三軍戦で研鑽を積んだため、公式戦登板は二軍でも1試合のみ。ただ、今季は二軍のローテーション定着を果たして好成績を収めたことで、今年7月24日に支配下登録入りを勝ちとった。

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著者プロフィール

  • 田尻耕太郎

    田尻耕太郎 (たじり・こうたろう)

    1978年生まれ、熊本市出身。 法政大学で「スポーツ法政新聞」に所属。 卒業後に『月刊ホークス』の編集記者となり、2004年8月に独立。 九州・福岡を拠点に、ホークスを中心に取材活動を続け、雑誌媒体などに執筆している。

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