【ドラフト2024】くふうハヤテの元公務員投手・早川太貴が阪神から育成3位で指名 「新設ファーム球団」が示した意義
1年前のいまごろは「球団ができる」ことしか決まっておらず、まだチーム名すら存在していなかった。2024年シーズンのNPBファームリーグ拡大によって誕生した「くふうハヤテベンチャーズ静岡」。文字どおりゼロからのスタートとなり、ウエスタンリーグを戦いながら、選手たちはNPBの12球団入りを目指すという、前例なき道のりを歩んできた。
そんな球団から、早川太貴が10月24日に行なわれたドラフト会議で、阪神タイガースから育成3位指名を受けた。
育成ドラフト3位で阪神に指名されたくふうハヤテの早川太貴 photo by Tajiri Kotaroこの記事に関連する写真を見る
【公務員からNPBへ挑戦】
早川は、くふうハヤテの"初代エース"だ。開幕投手を務め、2度目の先発登板となった3月22日の阪神戦(鳴尾浜)では7回3安打無失点の快投で2対0と勝利に導き、これがチームにとって記念すべきウエスタンリーグ初勝利となった。
つづく同31日の広島戦(由宇)では1失点完投勝利を飾り、7月にはフレッシュオールスターに出場して1イニングを無失点に抑えた。今季は25試合に登板して4勝7敗、防御率3.22の成績を収めた。
この北海道出身の24歳の右腕は、少し変わった経歴の持ち主だ。国立の小樽商科大学を卒業後は、北広島市役所の福祉課で働く公務員だった。
「ずっとプロを目指せるような立場じゃなかったのですが、大学4年で球速が出るようになって意識するようになりました。大学卒業後に独立リーグに進むことも考えたのですが、両親はいい顔をしてくれなくて......。それで公務員になって、その傍らで社会人クラブチームのウィン北広島でプレーを続けていました」
昨年もドラフト候補として名前が挙がり、地元メディアから取材されるなど、ちょっとした注目の的になった。だが、実際にはNPB球団からの調査書は届かず、なんとも言えない複雑な気持ちで"指名待機"をした。その悔しさで火がつき、公務員の職を投げ捨ててくふうハヤテのユニフォームに袖を通す決断をしたのだ。
「もっと自分を磨くために何かないかとアンテナを張っていたところに、ファーム新球団ができるというのを知って、必死に調べました」
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著者プロフィール
田尻耕太郎 (たじり・こうたろう)
1978年生まれ、熊本市出身。 法政大学で「スポーツ法政新聞」に所属。 卒業後に『月刊ホークス』の編集記者となり、2004年8月に独立。 九州・福岡を拠点に、ホークスを中心に取材活動を続け、雑誌媒体などに執筆している。