【日本シリーズ2024】ソフトバンクが日本シリーズ14連勝 山川穂高が明かした「先制アーチの舞台裏」
まだ1回表。だから試合を決定づけたと言うには本来ならば早すぎるが、それでも多くの人がソフトバンクの勝利を信じたに違いない。初回に飛び出した4番・山川穂高の先制2ラン。ソフトバンクの先発はパ・リーグ最優秀防御率のリバン・モイネロだったこともあり、十分にその価値があるものだった。
日本シリーズ第2戦、DeNA先発の大貫晋一から先制本塁打を放った山川穂高 photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る
【セ・リーグの投手は苦手】
初回、二死一塁。カウント1ボール2ストライクからDeNA・大貫晋一のカーブにうまく反応してバットを一閃すると、打球は左翼フェンスをギリギリで越えていった。
「追い込まれていたけど、状況的に長打(がほしいところ)だったと思うので、しっかり押し込めたというか、そういうバッティングができました。外野の頭は越えるかなと思いました。でも、やり慣れている球場じゃないので(ホームランになる)確信はなかったですけどね」
レギュラーシーズンで34発を放ち、本塁打王のタイトルを獲得。日本ハムと争ったクライマックスシリーズ(CS)ファイナルの3試合でも12打数6安打3本塁打と大暴れしてMVPに輝いた。今季の数々の打棒を見てきたなかでは、決して会心のアーチというわけではなかった。しかし、この一発には山川の"らしさ"が存分に詰まっていた。
じつは山川は、日本シリーズ前「セ・リーグと対戦するのは、正直苦手なんですよね」と告白していた。
「対戦数が少ない。パ・リーグのピッチャーって何年もかけて対戦するじゃないですか。だけどセ・リーグは年に1回、交流戦の時期だけですし、同じピッチャーと2回やることはまずないです。だから、ちょっとイメージが湧きづらい」
ただ、弱音を吐いたと思われるのは癪(しゃく)だと感じたのか、「それだけの話です」と笑ってつけ加えた。
とはいえ、苦手のひと言で片づけるわけにはいかないのは重々承知。どんな対策をするのかと水を向けると、その質問にも丁寧に答えてくれた。
「1回1回の勝負でいいんじゃないですか。組み立てがないというか、たぶんそういう感じ。短期決戦だし、1打席1打席が勝負。つまり捨てる打席がない。シーズン中はけっこうあるんです。ここは真っすぐだけを張っていくとか、今日は1日かけてフォークしか待たないとか、そういうのをやったりする時はあります。だけど、短期決戦ではそれはしない。どの球種を待つとかってあんまりない。来た球を打つ。原点に戻る。短期決戦はそういう感じだと思います」
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著者プロフィール
田尻耕太郎 (たじり・こうたろう)
1978年生まれ、熊本市出身。 法政大学で「スポーツ法政新聞」に所属。 卒業後に『月刊ホークス』の編集記者となり、2004年8月に独立。 九州・福岡を拠点に、ホークスを中心に取材活動を続け、雑誌媒体などに執筆している。