誰もが憧れたフォームの持ち主・平松政次は「ああいうふうに投げてみたいな」と江川卓のを真似た

  • 松永多佳倫●文 text by Matsunaga Takarin

連載 怪物・江川卓伝〜平松政次がうらやんだ唯一無二の能力(後編)
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 野茂英雄の"トルネード投法"や村田兆治の"マサカリ投法"、特殊なところでは小川健太郎の"背面投げ"など、個性的なフォームでプロ野球界を席巻した投手がいる。フォームひとつとってみても超人的な投げ方でファンを沸かせる。これもプロ野球の醍醐味のひとつである。

平松政次が理想と語る江川卓の投球フォーム photo by Sankei Visual平松政次が理想と語る江川卓の投球フォーム photo by Sankei Visualこの記事に関連する写真を見る

【理に適った江川卓の投球フォーム】

 そんななかで平松政次のフォームは、カッコいいフォームとしてプロの投手からも垂涎の的だった。典型的な本格派スタイルでダイナミックかつしなやかで、誰よりも美しかった。

 振りかぶって、右の軸足を曲げてから体重移動する際にテイクバックをこれでもかというくらい大きく広げると、グラブを持つ左手は天に向かって伸びる。真似しようにも、体全体のバネが必要なため、相当な筋力が必要になる。

 平松は自身のフォームについてこう語る。

「フォームに関して、聞いたり、教わったりというのはないです。プロに入った時に、金田正一さん、小山正明さん、村山実さん、稲尾和久さんを参考にしたっていうか、オープン戦や公式戦でしっかり目に焼きつけて、宿舎に帰ってからシャドーピッチングをしていましたよ。そうやって、自然とできあがったのかなと思います。

 でも、私のフォームなんかよりも、江川のフォームのほうがすごいんです。江川のフォームは、やっぱり理に適った理想の投げ方なんです。だから現役時代、江川のフォームを真似したことありますよ」

 プロの投手からも憧れるほどのダイナミックで華麗なフォームの平松が、江川のフォームを真似た──まさかの発言が飛び出し、思わず耳を疑った。柔和な顔立ちだが、目の輝きだけは鋭いものがある。リップサービスで言っているのではないことは、すぐにわかった。はたして、その真意とは?

「カッコいいのと、ボールが走るとはまた違いますからね。江川の小さめのテイクバックからトップの位置にくるっていうのが、なんとも理に適っている。

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著者プロフィール

  • 松永多佳倫

    松永多佳倫 (まつなが・たかりん)

    1968 年生まれ、岐阜県大垣市出身。出版社勤務を経て 2009 年 8 月より沖縄在住。著書に『沖縄を変えた男 栽弘義−高校野球に捧げた生涯』(集英社文庫)をはじめ、『確執と信念』(扶桑社)、『善と悪 江夏豊のラストメッセージ』(ダ・ヴィンチBOOKS)など著作多数。

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