「イチローもえげつなかったけど...」。元審判員が驚愕した名外野手ベスト5 (3ページ目)

  • 水道博●文 text by Suido Hiroshi
  • photo by Sankei Visual

 以前、記者から聞いた話ですが、やはり外野守備に定評があった元阪神の赤星憲広さんが福留を絶賛していたそうなんです。

「僕が打席に入って構えた時、視界に入っていなかったはずのライトを守る福留がいつの間にか視界に入っている」

 つまり、バッターの特徴やその日のピッチャーの調子によってポジションを変えていたということです。福留選手の守備範囲が広かったのはポジショニングが優れていた証拠。新庄選手同様、ポジショニングのうまさが際立っていた選手でした。

球界ナンバーワンの強肩は?

羽生田忠克(元西武)

 私が見てきた外野手で強肩ナンバーワンは、西武にいた羽生田忠克選手です。土浦日大高校からドラフト外でプロ入りして、1983年から97年まで現役でプレーしていました。

 羽生田選手といえば、私がプロの審判になる前の1987年にスポーツニュースで見た映像は、今も鮮明に覚えています。

 9回二死一塁で、ライトの羽生田選手がフライを落球。ボールをすぐさま拾うと、ノーバンでバックホーム。タイミングは完全にアウトだったのですが、伊東勤捕手が落球して得点を許してしまった。記録はただのエラーなのですが、あの送球を見た時の衝撃は、ホント忘れられないですね。

 私が審判1年目の1992年、羽生田選手の地を這うようなバックホームをこの目で見たのですが、もう漫画の世界ですよね。「こんなことがあるのか。これがプロか......」と。まさにあの時テレビで見た映像の再現です。

 驚いている球審の私に、声をかけてきたキャッチャーの言葉はいまだに忘れられません。

「これがプロなんだわ。日本で一番だからね。いいもん見たねぇ」

 じつはこの試合、一軍ではなくファームの試合で、その捕手は伊東選手ではなく、デーブ大久保(大久保博元)選手でした。当時の西武は黄金時代で、羽生田選手はバッティングに課題があり、なかなか一軍でのプレー機会がありませんでした。それでも、私の審判人生でナンバーワンの強肩外野手と言えば、間違いなく羽生田選手です。

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