日本ハム退団で蘇ったハングリー精神。楽天・西川遥輝「野球人として一度死んだ身。はい上がるしかなかった」 (3ページ目)

  • 田口元義●文 text by Taguchi Genki
  • photo by Koike Yoshihiro

 日本ハムの若手時代、レギュラーになるため、ただ上だけを目指して邁進していた頃の自分を、西川は再び覚醒させたのである。

「そういう気持ちを忘れていたわけじゃないんですけど、(ここ数年は)今ほどの感じではなかったと思います。ハングリー精神ってところをもう1回、蘇らせてもらえたかなって」

 4月16日、楽天はソフトバンクとの直接対決を制して首位に浮上した。試合を決めたのは、楽天不動のリードオフマンのホームランだった。

 この日、西川は30歳になった。

 節目の年に楽天に移籍したことの意味。それをどう捉えているのか?

「年に関してはあんまり気にしてなくて」

 少しだけ、そっけなく答える。でも、すぐに「ただ......」と、言葉をつなぎ合わせた。

「僕の周りの人たちも29、30でいろんな転機が訪れているんで。そういうタイミングだったのかなって思います」

 西川のバースデーアーチで勝利してから、楽天は首位を快走する。球団記録を更新する11連勝も果たした。シーズン序盤にして他の追随を許さないほどの強さを見せる。

 最少失点に抑える投手陣。彼らの奮闘に打線が応える。その攻撃で切り込み役を託された男が、ボールを見極めてチャンスメイクし、ダイヤモンドを疾走する。

 先など見据えない。今を全力で──。西川はその姿勢を、いつだって体現する。これこそが、一度は野球選手としての死を自覚した男の自己証明なのである。

「本当に後悔したくないんで。思い残すことがないくらい、シーズンをやりきりたいなって思っています」

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