「正しい投球フォーム」は本当に存在するのか? 吉見一起が「自分の感覚」の重要性に気づかされた中日時代の苦い教訓 (3ページ目)

  • 中島大輔●文 text by Nakajima Daisuke
  • photo by Ohtomo Yoshiyuki

「柔軟性や連動性といった体の動きができないと、フォームを直すことは難しい。『正しいフォームがあれば大丈夫』と言う人がいますが、『じゃあ腰が曲がっているおじいちゃんを、いいフォームで毎日100球投げられるようにしてもらえますか』と言ったら無理ですよね。昔、畳で生活していた人たちは股関節がナチュラルで柔らかいけれど、現代は生活様式の変化もあり、硬い子が多くなっています。だからこそ、正しいフォームで投げるための下準備が非常に大事になる」

 高島トレーナーはピッチングに必要な要素について、「筋量」「筋出力」「柔軟性」「身体操作性」の4つに因数分解できると言う。これらがバランスよく高まり、理想的な投球パフォーマンスを求められるという考え方だ。

 たとえば、筋量が多くて速い球を投げられても、柔軟性に欠けるとケガにつながりやすい。体が硬いまま投げ続けていると、その動きが体に染みつき、さまざまな弊害も出てくると高島トレーナーは指摘する。

「硬いまま動いていると、自分が柔らかくなったイメージを想像できません。そういう選手が柔らかくなると、『硬くなったら動きにくい』ということに気づいていきます。以前はアウトローにいい回転のストレートを投げられていたのに、最近は投げられなくなったとします。理由としては、柔軟性が落ちているから自分の体を思いどおりに動かせなくなったことが考えられます。それが『調子が悪くなった』ということ。

 でも、そもそもアウトローにきれいなストレートを投げたことがない子は、体が柔らかくないとそういうボールを投げられないこともわからない。だから、"見えない世界"をどうやって見させてあげるかが大事です」

体全体を使って投げる

 投球フォームとは、どのような行為なのか。原理を突き詰めて小中学生の能力を伸ばしているのが、筒香嘉智(ピッツバーグ・パイレーツ)や森友哉(西武)、入江大樹(楽天)が中学時代に所属した硬式野球チームの堺ビッグボーイズだ。

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