鈴木誠也はいかにして日本の4番になったのか。名伯楽が語る「目力がすさまじかった」 (2ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Koike Yoshihiro

 鈴木は入団1年目からウエスタン・リーグで93試合に出場。打率.281、2本塁打、38打点という好成績を残している。だが、2年目のシーズン途中から、内田さんは鈴木を外野で起用するようになる。

「守備でのエラーがバッティングに響くようになってしまったんです。堂林(翔太)もそういうところがありましたが、送球エラーをするとスタンドから『ワー!』と歓声が上がって、エラーした選手は『申し訳ない......』と意気消沈しやすい。それなら、外野に回したほうが本領を発揮できると考えたんです」

 外野に回ったことで、鈴木は持ち前の強肩を存分に発揮できるようになった。

【量で質をつくる練習法】

 それでは、鈴木の打撃の進化について内田さんはどのように見ていたのだろうか。入団当時を振り返ってもらった。

「最初はうしろの手(右手)が強くて、ドアスイング気味でした。高校で金属バットを使っていた弊害だったのでしょう。木のバットは芯の幅が数センチしかないのに対して、金属バットは10センチ近くあります。道具が仕事してくれるので、前の手ではなくうしろの手でぶつけるような打ち方をすると、力がある選手は飛ばせてしまうんです」

 内田さんが強打者を指導する際、レフトからライトまで広範囲に打てるようアドバイスを送る。広角に打てればヒットゾーンが広がり、相手バッテリーからの攻めにも柔軟に対応できるからだ。広角に打つために必要なのは、バットヘッドを内側から出す「インサイド」のスイング軌道である。

 内田さんはバットが外回りする鈴木に対して、内側からヘッドが出てくるように指導した。

「スタンドティーのすぐ横(左打席側)にネットを立てた状態でティーバッティングをさせたんです。アウトサイドからバットが出てくると、ネットに当たってしまう。バットを内側から出す練習をしました」

 広島は伝統的に練習が厳しいと言われる。実際に内田さんも「量で質をつくる」という考え方の持ち主だ。だが、内田さんは「カープの練習時間は決して長くない」と語る。

2 / 4

厳選ピックアップ

キーワード

このページのトップに戻る