広島ドラフト4位・田村俊介のスイングは若き日の掛布雅之のよう。二軍より一軍で育成してほしいワケ (2ページ目)

  • 安倍昌彦●文 text by Abe Masahiko
  • photo by Sankei Visual

【高校最後の打席で会心の一発】

 今シーズンのスタートとなった中京大中京との練習試合。相手エースは今秋のドラフトで日本ハムから5位で指名された畔柳亨丞。その初球、150キロ近いストレートを振り抜くと、打球は愛工大名電グラウンドの20メートルほどあるネットを軽々と越えていった。

 そして高校生活最後の試合となった今夏の甲子園での東北学院戦。劣勢の8回に放ったライトスタンドへのホームランは、見事なまでに美しい大アーチとなった。高校野球生活最後の打席でこれほど完璧に打てる田村の技術力の高さ、精神力の強さに感服した。

 田村のバッティングを見て思い出したのが、若かりし頃の掛布雅之だ。足首から上に向かって巻き上げるような連動によって体に巻きつくようにバットが振り出され、左手の押し込みと右手の引きで豪快なフォロースルーへとつなげる。

 さらに、失投を見逃さない勝負勘と選球眼。ひと振りで仕留めるインパクトの精度。田村の能力を挙げていったらキリがない。

 以前、プロの指導者の方が言っていたのだが、「突き抜けたセンスを持った者はより高い次元に置いた時ほど輝きを増す」という。おそらく田村も、じっくり鍛えてから......ということになるだろうが、一軍で使うことで我々の予想をはるかに超えるスピードで成長するのではないだろうか。田村はそんな期待を抱かせてくれる選手である。

 ならば、どこで使うのか。一塁手でレギュラーの座をつかめば、何年も連続してゴールデングラブ賞を獲れる選手になるだろう。ハンドリングの柔らかさ、フィールディングは間違いなく一級品だ。

 今年の広島の一塁は、坂倉将吾、堂林翔太、ケビン・クロンなどが守ったが、最終的に固定できなかった。将来の中軸と見込んだのならば、ヤクルトが村上宗隆を使い続けたように、ポジションを1つ空ける「勇気」も必要だろう。

 上位指名ではなくても、「コイツは本物だ!」と思えば迷わず起用する。チーム再建のカギは意外とそういうところなのかもしれない。それほど田村のバッティングは魅力に溢れている。

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