イチロー、金本知憲、山本由伸らに続けるか。球界のスターになる可能性を秘めるドラフト4位入団の逸材たち (3ページ目)

  • 菊地高弘●文 text by Kikuchi Takahiro
  • photo by Sankei Visual

 前川は1年夏から智辯学園高の4番に座り、甲子園(交流試合を含む)に4回出場した甲子園のスター。やや打撃に悩んだ時期もあったが、体重を絞ってキレが出た今夏は打率.455、2本塁打の活躍で準優勝に大きく貢献。近年、甲子園大会で活躍した高校生を数多く獲得している阪神に4位指名された。同じ左打者の大物・佐藤輝明や、2学年違いの右のスラッガー・井上広太らホープがひしめく環境で台頭できるか。

 泰勝利(楽天4位)、秋山正雲(ロッテ4位)はともに小柄ながら、力強いストレートを投げ込む左腕という共通点がある。泰は奄美大島の瀬戸内町出身で中学時代は野球部員が1人しかおらず、両親とキャッチボールをするなど高校野球に備えていた。高校では入学当時110キロ程度だった球速が、3年夏には150キロまで到達。そんな奇跡的な歩みも、ドラフト4位から大成すればさらにクローズアップされることだろう。

 最後に紹介したいのは、渡部遼人(オリックス4位)。広い守備範囲と盗塁可能な俊足を武器にする外野手だ。ドラフト時には「4位縛り」という制限があり、5位以降の指名なら社会人に進む意向を示していた。ドラフト4位のウェーバー順位最下位だったオリックスが指名しなければ、大卒時点でプロに進むことはなかったのだ。

 オリックスの外野陣は吉田正尚、福田周平、杉本裕太郎とチームに不可欠な人材が並ぶが、渡部の守備力は間違いなく即戦力になるだろう。チームの選手層に厚みを持たせる人材になりそうだ。

 ドラフト上位指名ではなかった悔しさ、なんとかプロに滑り込めた喜び、まだまだ潜在能力を発揮できていないもどかしさ。ドラフト4位指名を受けた選手の胸中には、さまざまな思いがあるだろう。いずれ「2021年花のドラ4組」と呼ばれる日はくるのか。彼らの挑戦が始まろうとしている。

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